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海洋生物の作品
[2026/07/25]

大学時代、広島に帰省する度に美術大学の友人たちと日本海に海水浴キャンプに行っていました。広島から島根まで車で3時間、日本海の海は透明度があり、瀬戸内海よりも美しい海でした。島の多い瀬戸内海と違って、日本海は水平線を見ながら泳げるので解放感があります。海水浴の合間には素潜りでさざえを取ったり、釣りをしたり。夜の日本海水平線上に輝いているイカ釣り船のランプが美しく、昼夜にわたって夏の海を堪能することができました。
ところで近年、海水浴人口が減少傾向にあります。1985年のマリンレジャー人口は3500万、それが2025年には500万人、海に行く人は3000万減った計算になります。理由は海水の粘り気が気持ち悪い、プールの方がおしゃれで利便性が高いなどです。時の流れと共に水のレジャーに関する日本人の感性も変わったようです。

写真は琉球焼の魚文壺、三田焼の青磁ホタテ型皿、李朝の瑠璃釉海洋生物水滴。いずれも水の生物をデザインした作品です。これらが製作された時代、人々にとって海は遊び場というよりも食糧確保や生活の場でした。当時の人々海の生物の図柄が使われた生活用具を見ながら海とのつながりを感じていたのでしょう。
最近は世界的に生成AIなどを利用したバーチャルの仮想空間ブームですが、デジタル空間では生物や自然のリアリティを感じることはできません。やっぱり潮の香りやぬめりのある魚やなまこ、貝を海辺で触ってこそ海のリアリティを感じることができる。現在の社会は便利ですが、自然に対する人間の感性を変化させいるような気がします。私が古美術商として写真のような作品を扱っているのはデジタルな世界への対抗心なのかもしれません。

琉球焼魚文壺 高さ 約15.8cm/胴径 約14.5cm
李朝瑠璃釉海洋生物水滴 高さ 約4cm/横幅 約7.5cm
三田焼青磁ホタテ型皿 口径 約12.6cm/高さ 約2.4cm

御売約、ありがとうございました

波乗り千鳥
[2026/07/18]

毎年、7月になるとカラオケに行って、サザンオールスターズの「波乗りジョニー(2001年)」を歌います。暑い夏の到来とともに恋の季節がやってくるという歌です。1980年代の遊びといえば、海。この曲を歌うたびに20歳代の夏、海でしていた恋愛を思い出します。
写真は、伊万里焼染付の波乗り千鳥文皿と輪島塗の千鳥文椀。伊万里焼の作品には写実風の岩に千鳥が、漆器碗には大和絵風の千鳥が描かれています。伊万里焼の作品を見ると千鳥が染付で描かれているので、波乗り千鳥文は夏柄ととらえがちですが、本来、千鳥は冬の季語として使用されています。冬柄である氷烈文が涼感を得るために夏に使用されるように、波乗り千鳥文も夏に使用されていたのでしょう。また、昔の人たちは群れで飛ぶ千鳥を家族円満の吉祥として使用していました。
ところで先日、経済番組を見ていると「波乗り相場」という言葉を耳にしました。「波乗り相場」の考え方は、AI企業の株価高騰を利用して、波に乗って儲けるというものです。今年に入り、アメリカのSOCKS指数の高騰の影響を受け、日本ではキオクシアやソフトバンクなどの半導体関連の株が上がっています。 4月初旬に53,000円だった日経平均株価が6月22日、72,353円となり、3か月で19,000円も上昇しています。それを牽引したのが半導体株で、他の分野の株は逆に株価を下げ、高い波に乗れなかったようですが、平均株価を見ると強気相場が続いています。
ちなみに、仙遊洞のお客様たちに「株取引をやっていますか?」と聞くと、ほとんどのお客様は「株はやっていないよ」と答えます。株でもうけた人々は古美術品よりも高級ワインや車などのブランド品収集に興味があるのでしょう。
「波乗りジョニー」は、「月はおぼろ 遥か遠く 秋が目覚めた」で終わります。夏の終わりとともに若者の恋愛の季節も終わりますが、果たして株価はどうなるのか。
いずれにせよ、古美術好きには株価もあまり関連がないように思えるのですが…。

伊万里焼皿の口径 約21.5cm/高さ 約3cm
漆椀の口径 約11.7cm/高さ 約8.5cm

御売約、ありがとうございました

涼しさを感じさせる器
[2026/07/11]

今週に入って本格的な夏が始まった感じがします。今年の夏は世界的な熱波で、エルニーニョ現象が起こることも予想されています。猛暑はエアコンなしでは過ごせません。これから3か月、どうなることやら。
写真は大堀相馬焼の緑釉扇型小皿と能佐山焼染付の扇文そば猪口。共に扇文の作品です。扇風機やエアコンのなかった時代、人々は扇やうちわ、打ち水などを使って涼を取っていました。現在でも水の流れがある森の木陰に行くと涼しさを感じることができます。先週のブログでも書きましたが、本品が作られた時代、日本の気温は今ほど高くなく夏も過ごしやすかったはずです。日本人は扇など涼感のある柄を描いた食器を使いながら夏を過ごしたのでしょう。
ところで大堀相馬焼も能佐山焼も有名な地方窯ですが、市場に作品が流通する時は瀬戸焼や伊万里焼として扱われます。実際にこれらの窯は瀬戸焼や伊万里焼の産地から陶工が技術移転して創設されています。大堀相馬焼の起源をたどると江戸時代初期の唐津焼の影響を受けていることが研究でわかっています。 一方の能佐山焼そば猪口の方は口辺内の柄、平らな高台など伊万里焼にはない特徴を備えています。磁器窯創設の起源が伊万里焼にあるとしても地方窯には独自の特徴があるので面白さがあります。
扇小皿にワサビを乗せ、そば猪口にそば汁を入れて、冷たいざるそばを食べると夏らしさを一層感じることができるでしょう。古美術品の季節感を利用すると生活が豊かになります。

大堀相馬焼豆皿 口径 約9.6cm/高さ 約5.5cm
能佐山焼そば猪口 口径 約8.5cm/高さ 約6cm

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蕎麦猪口の御売約、ありがとうございました

氷の世界
[2026/07/04]

今から50年前、中学生だった私はフォークソングに夢中でした。広島市出身の私にとってフォークシンガーといえば吉田拓郎。アルバム「よしだたくろう LIVE‘73(1973年12月21日発売)」は印象深いアルバムです。その中でも「春だったね」を何度も繰り返し聴いていました。同年に発売されて衝撃だったのが井上陽水のアルバム「氷の世界」。「氷の世界」中のハーモニカの音と「毎日、吹雪、吹雪、氷の世界」という歌詞が印象的で耳から離れませんでした。「春だったね」と「氷の世界」、春と冬を表現したフォークソングは今でも記憶の中に強く残っています。
写真は大正時代に作られた吹雪文の氷コップ。この作品を見た時、陽水の「氷の世界」が浮かんできました。このような氷コップは夏向きの商品。エアコンのなかった時代、日本人は目で涼しさを感じていました。
現在、エアコンは普及品ですが、1970年頃のエアコンは高価でした。ネットで調べると1970年の窓用エアコンは約15万〜20万円、現在の価格に換算すると約40万〜60万円。一般庶民には無縁なものでした。
ちなみに1970年7月の練馬区の平均気温は25.4度で、最高気温は29.1度。2025年7月の平均気温は28.6度、最高気温は34.1度。地球温暖化の影響が顕著です。
最近、昭和時代のレトロ商品がブームです。本品でかき氷を食べながら、井上陽水の「氷の世界」を聞くと一層、涼しさを感じることができるかもしれません。

口径 約14cm/高さ 約5.7cm

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