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アワビ型の陶磁器
[2024/07/28]

7月28日(金)、パリで第33回夏季オリンピックの開会式が開催されました。セーヌ川での入場、フランス人らしい演出で洒落ていました。仙遊洞ではオリンピック期間、フランスのアンティークを出品いたします。パリオリンピックの記念にいかがでしょう。
パリでの開会式を見て、1986年に過ごしたフランスのバカンスを思い出しました。私が留学していたアヴィニョンは現在、演劇フェスティバルの季節。この時期、人口13万人のアヴィニョンに100万人の観光客がやってきます。その年のフェスティバルで作曲家オリビエ・メシアンにサインをもらったり、ジャズ・ピアニストの山下洋輔さん、画家の松井守男さんと一緒に飲んだり。今、振り返るとあの夏は夢のような季節でした。
夢といえばフランスの海やプールは若者たちで賑わっています。一般的にフランス人女性はトップレスで水泳を楽しむので胸もあらわ。トップレスに慣れていない日本人の私は大いに戸惑ったものです。
ところで、暑い夏には冷たいビールが最高。スポーツ観戦しながら飲むビールは格別です。それに美味しい魚介類があればいうことありません。写真はアワビ型の皿とさざえの蓋物。今回、通信販売欄の出品準備をしている最中、フランスで食べた魚介類のことを思い出しました。当時、フランス大統領はミッテラン。フランスではハイネケン350tが1本25円、テーブル白ワインが1本100円、マルセイユのレストランの牡蠣の盛り合わせが1000円。物価高の現在では考えられない値段でした。ちなみに私の通っていたアヴィニョン大学の授業料が1年間3万円。あれから36年が経ち、世界的に物価は上昇しています。恨み節ではありませんが、ITがなかった時代は呑気でゆったりと時間が流れていたように感じます。一方で日本のバブル時代、高価だった古美術品が廉価で購入できます。 食品、生活用品の値段が上がっても、古美術品の値段は下がっているのですから物価高も良し悪し。時代によって価値は変わっても美の価値は変わらないのが良いですね。

アワビの口径 約16.5cm×14cm
サザエの高さ 約10cm/横幅 約13cm


アワビ型皿 御売約、ありがとうございました
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https://mainichi.jp/graphs/20240727/mpj/00m/050/003000f/20240727mpj00m050068000p


朝顔の思い出 亀山焼 朝顔 杯洗
[2024/07/21]

大学時代、古井由吉の小説『槿(あさがお)』(1983年)を読みました。大学生にとって古井の作品は難解で読むのに一苦労。古井小説には物語性がないので、細かな描写を追うしかないことが原因です。リアリティがあるのですが、延々とそれが続くと苦痛です。 今回、出品した亀山焼の朝顔文杯洗を見た時、ふっと「腹をくだして朝顔の花を眺めた。十歳を越した頃だった」という『槿』の冒頭を思い出しました。昭和時代、各家庭には小学生が植えた朝顔の花壇があり、朝顔が咲く時期、多くの子供たちが冷たい物を取りすぎて腹をくだしました。きれいに咲いた朝顔は病気の子供には毒です。朝、きれいに咲いていた花は夕方には萎むのですが、それが自分の病状と重なり苦痛となります。古井はそれを小説で老いていく中年を主人公にして表現しました。当時は若かったため理解できなった内容が、歳を取るにつれ理解できるようになります。ところで、人と違ってモノである磁器は長生き。写真の杯洗は製作された当時のままの姿をしています。磁器の上に描かれた朝顔はいつまでたっても萎むことはありません。古美術品に出会い、体験の中から様々な思いが浮かび上がってくるのは面白いですね。

口径 約16.3cm/高さ 約11.7cm

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小松正衛氏と古美術
[2024/07/14]

小松正衛さん(菊池寛の書生、文芸春秋社取締役、東京良寛会会長)の本を最初に購入したのは、「中国古陶磁(保育社カラーブックス、1993年刊)」です。当時の中国はケ小平の行った改革開放政策の影響を受けて各地の開発が進み、建設現場から古代の発掘品が大量に出土していました。それが香港経由で日本に輸入され、高価だった古美術品はリーズナブルな価格で購入できるようになっていました。その時、私のガイドブックとなったのが「中国古陶磁」です。 20年後、縁あって小松さんが収集した古美術品の整理をしたことがあります。家に行くと所せましと骨董品が並び、「骨董屋よりも在庫があるな」と思いました。その時の品物は8年前、仙遊洞の通販に出品、多くのお客様に購入していただきました。そして今回、最後の初出しを行ったので、2週にわたって通信販売欄に出品いたします。商品の中には「小さな蕾」のエッセイに登場する作品があります。すべての商品について調べられなかったのですが、出品した商品の中にもエッセイに掲載された作品があるかもしれません。収集品を見ると「本当に古美術が好きだったのだな」と感じます。きっと古美術品も小松さんと一緒に時を過ごせて楽しかったでしょう。

高さ 約14cm/横幅 約6.5cm

御売約、ありがとうございました


涼感のある器
[2024/07/07]

1974年、井上陽水が歌う「真っ白な陶磁器を眺めては飽きもせず」という歌を聞いた時、中学生の私は「白い陶磁器を眺めて何が楽しいのだろう」と思ったことを覚えています。それから50年、私は古美術商になってやっと歌の意味が理解できるようになった気がします。
中国人が白磁を製作するようになったのは唐時代。河北省邢州内邱県近傍にある邢州窯が白磁を生産、宋の定窯と共に名声を博しました。それ以降、アジアでは李朝の白磁、柿右衛門の濁し手、徳化窯などの魅力的な白磁を生産しました。白磁の魅力はすべてを包み込むような存在感でしょう。
私が白に魅了されたのは大学時代です。ある秋の夕暮れ時、多摩丘陵を歩いていると、辺り一面が真っ白になって包みこまれる不思議な体験をしました。八王子は夕焼けで有名な地域。夕暮れの経過と共に周辺にあった森の風景が徐々に消えていき、真っ白な空間の中では何も見えなくなるのです。単なる自然現象ですがその体験は白い空間とは何かを教えてくれたような気がします。ちなみに私が自然現象の色彩に包み込まれる体験をしたのは白と黒です。
白磁の色は産地や窯の状態によって微妙に違います。還元では白が寒色に、酸化では暖色に仕上がります。異なった白磁に出えることが古美術蒐集の面白さ。写真の作品を出品する前、それを並べて眺めながら、飽きも来ずに時間を過ごしました。

李朝白磁茶碗の口径 約14cm/高さ 約8.5cm
広東窯白磁茶碗の口径 約15.5cm/高さ 約6.5cm
伊万里白磁大なますの口径 約17.5cm/高さ 約5.5cm
平佐焼白磁盃洗の口径 約14.4cm/高さ 約11.2cm

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