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黄瀬戸とスンコロクの鉢
[2024/02/25]

先週、東京は雨がちの天気でした。一方で気温は4月下旬並み。2月にしては暖かい気候です。
写真は美濃焼の黄瀬戸(江戸時代初期)とスンコロクの青磁釉の鉢(タイ15世紀)。春に菊のデザインの作品を出品するのは季節感がずれている感じがしますが、たまたま両作品が同時期に入手できたので陶器について考察します。スンコロクの鉢を見た時、黄瀬戸に似ているなと感じました。しかし、時代を考慮するとスンコロクが黄瀬戸に似ているのではなく、黄瀬戸がスンコロクを模倣して作られたことがわかります。桃山時代の黄瀬戸や織部は和風と思われがちですが、ルーツをたどるとデザイン的には東南アジアや中東の陶器に起源があります。これらの作品を見ると16世紀の日本が国際交流の盛んな国だったことがわかるでしょう。日本が鎖国的な国家になったのは17世紀後半、清朝の成立によって日本人の海外渡航が減少したからです。そのような状況は現在でも起こっており、以前にもまして世界的に中国の影響は大きくなっています。また、円安によって日本人は外国に行きにくくなり、グローバル化の流れとは逆向きの現象が起こっています。秀吉が朝鮮半島に出兵した時期は戦前の日本、清朝が安定し始めた1660年頃は現在の日本とそっくりです。様々な古美術品に接していると、それをきっかけに日本の状況を理解できるようになります。古美術品との出会いによって世界に接することができるのは楽しいですね。

黄瀬戸陶片の口径 約27.5cm×25.8cm/高さ 約9.4cm
スンコロク鉢の口径 約17cm/高さ 約6.5cm

御売約、ありがとうございました


犬山焼 色絵 立ち雛図 油壺
[2024/02/18]

先週は春節だったので、多くの中国人が日本に来たようです。テレビニュースは外国人観光客で混雑する各地の様子を放映、それに日経平均株価が上昇したこともあって、人々は寒い冬を楽しんでいる感じがします。毎月、イベントが開かれるので日本はいつもお祭り騒ぎ。2月中旬になると日本中で3月3日のひな祭りの準備が始まります。仙遊洞のある西荻では毎年、美術関係者が中心となって「西荻雛祭《が開催されます。コロナ禍前までは当店も「西荻雛祭《に参加していたのですが最近はひな祭りに関する商品を扱わなくなったので参加を見合わせています。
写真の作品は犬山焼の色絵の立ち雛図油壺。油壺は江戸時代に鬢付け油などを入れる容器として使用された道具です。近代になって作られたひな人形はたくさん残っているのですが、江戸時代の商品になると数が少なく、今回の油壺などは珍品の部類に入ります。この油壺が製作された江戸時代は封建制度が残っていた男尊女卑の社会でした。しかし、最近は男女平等も徐々に浸透、欧米ほどではありませんが優秀な人材は性別に関係なく活躍できる社会になりつつあります。ちなみに杉並区の国会議員も区長も女性。杉並区で生活している女性たちは本当にたくましい。「西荻雛祭《やひな祭りの影響でしょうか。

高さ 約6.8cm/胴径 約12cm

御売約、ありがとうございました

木彫 文殊菩薩
[2024/02/11]

テレビで受験生たちが湯島天神に行き、合格祈願をしているニュースが流れています。それを見て、自分の子供たちの受験や合格発表の時にハラハラドキドキしたことを思い出しました。それは昔の話ですが今、思い出しても緊張を感じます。受験生にとって希望する学校に入学することは一大事。神仏にすがってでも合格を勝ち取りたいでしょう。写真は明治時代に製作された木彫の文殊菩薩。彫刻的な要素が入っているので明治維新が落ち着いた文明開化期に作られた作品であることが想像できます。当時、日本人は全国に設置された高等教育機関で学問を修めることによって立身出世を夢見ていました。高等教育機関の数が少なかった時代、受験戦争は苛烈を極めたはず、特に薩長閥から外れた人々にとって勉学に励むことは重要だったでしょう。
ところで受験には運上運がつきもの。受験当日の体調やその日の天候によって試験結果が左右されてしまうこともあります。自分の実力を発揮するのであれば焦りは禁物、気持ちを落ち着かせるために受験生たちは、お守りなどを持参します。本作を見ると文殊菩薩は獅子に乗って平然とした表情をしています。 なるほど文殊菩薩は獅子身中の虫を退治するための神仏、気持ちを落ち着かせてくれる信仰対象です。古美術品も落ち着いて観賞すると新しい世界を見せてくれます。今回、文殊菩薩がなぜ獅子に乗っているのか理解できたような気がしました。受験生の皆様、落ち着いて受験に臨んでください。

台座から光背までの高さ 約26.5cm

御売約、ありがとうございました

https://www.photo-ac.com/main/search?
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犬山焼唐子徳利と大堀相馬焼跳ね駒徳利
[2024/02/04]

来週10日から17日まで中国では旧正月の春節を迎えます。コロナ禍も落ち着き、国内移動が自由になって約3億人が旅行などで移動するとか。やはり中国の春節は大規模ですね。
写真の犬山焼徳利には唐子が楽器を演奏する様子が描かれています。その背景に松や花が描かれているのでこれが春節を祝う作品であることがわかります。この作品が作られたのは幕末、まだ日本も旧暦を使用していた時代です。一方の大堀相馬焼の徳利には走る馬が描かれています。相馬は平将門の時代から馬の産地で野馬追(のまおい)は、国の重要無形民俗文化財に指定されています。
この徳利を出品した理由は今月12日が初午の日だからです。江戸時代、人々は初午の日(旧暦の正月、最初の午の日)に稲荷神社へ参拝することで、お稲荷様の御利益にあやかると信じていました。午(うま)は午年の午で馬を表わし、この日から夏に向かって太陽活動が活発になっていきます。興味深いのは初午の日、京都では稲荷神社に詣で稲荷寿司などを食すことです。 最近は恵方巻の方が有吊ですが、昔の人は初午の日に初午いなり、初午だんごなど稲荷神に関連した食物を食べました。2本の徳利を見ながら旧暦の行事を思い出し、初午の日に商売繁盛を願ってきつねうどんと稲荷寿司でもいただこうかと考えています。

犬山焼唐子徳利の高さ 約24cm/胴径 約8.7cm
大堀相馬焼跳ね駒徳利の高さ 約27cm/胴径 約9.5cm

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https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/a/ab/Fushimiinari-taisha%2C_torii-2-1.jpg


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