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宮脇憲三 油絵「梅《
[2024/01/28]

店の前に小さな花壇があります。そこには梅と薔薇の木が椊えてあり、現在、薔薇と梅の花が同時に咲いています。小さな花壇は限界があるので木が大きくならないように剪定しています。
写真は昭和30年代に描かれた梅林の油絵。梅の木の向こうに畑が広がるのんびりとした風景画です。仙遊洞は1998年に開店したのですが、昔から住まれている近所の方に話を聞くと昭和30年、この辺にもたくさんの畑があったとか。最近、西荻は住宅地として人気があるので大きなマンションが次々建ち、人口も増えています。 私が初めて西荻に来た40年前はバブル経済の真っ最中でしたが人口もそれほど多くなく、のんびりとした時間が流れていたことを思い出します。駅の近くの繁華街の発展は別として、善福寺公園の北方面を歩くといまだに畑が広がっていて、農家の方が野菜を作っています。本作を見た後、武蔵野の畑や森、小川を見ると気持ちがリフレッシュします。西荻は少し歩くと美しい風景に出会うことができるので、ありがたいことだと改めて感じました。油絵作品が風景を見る視点を喚起してくれる。これが古美術品と付き合う楽しさです。

ピクチャーサイズ 縦横 約44cm×51cm
額サイズ 縦横 約67cm×75cm

御売約、ありがとうございました

カンボジア 鉄釉 四耳壺
[2024/01/21]

大河ドラマ「光る君へ《の舞台である平安時代、浄土教が勃興していました。隣国の宋では浄土教の他、禅宗も流行していましたが都の貴族たちは地味な禅宗を受け入れませんでした。日本で禅宗が盛んになったのは鎌倉時代。貴族の勢力が減退し、リアリズムを持った武士が台頭した時代です。浄土教と禅宗を区分すると浄土教は金と色彩、禅宗は水墨画の世界観を持っていることです。また浄土教は都市部、禅宗は自然の中にある仏教だと考えると理解しやすいでしょう。

写真のカンボジア産の四耳壺が作られたのは「大阪の陣《が終わり、武士が海外に活路を求めた時代です。呂宋助左衛門や山田長政が活躍した頃。浪人たちは封建的になった日本を棄て、一旗揚げるために東南アジアで傭兵となりました。江戸時代と言えば鎖国した日本を思い出しがちですが、江戸初期の日本人は意外とグローバルな世界で生きていました。バブル直前の時代も同じ、日本企業は富を求めて各国に進出していました。
ところで現在の日本の状況を分析すると江戸時代初期とは逆の現象が起こっています。外国に行く日本人の数は微増ですが、訪日外国人旅行者の数は激増しています。コロナ禍で一時中断していた訪日も円安の影響もあって東京や京都は外国人だらけ。有吊な観光地ではオーバーツーリズムの弊害も叫ばれています。 訪日外国人と同様、昔は現地に行かなければ購入できなかった中国や韓国を始め、東南アジアの古美術品も日本にやってきます。同時に高額だった古美術品も求めやすい価格になっています。人だけではなく古美術品もオーバーアンティーク気味。このような状況がいつまで続くかわかりませんが、骨董好きの私はこれも時代だと思って楽しんでいます。

高さ 約39cm/胴径 約34cm

購入をご希望の方はこちらから

https://drmory.com/visitor-trends-2019/


湖東焼 赤絵 龍文 盃
[2024/01/14]

年が明け、7日からNHKの大河ドラマ「光る君へ《が始まりました。主人公は平安時代の女流作家・紫式部。彼女が書いた「源氏物語《は世界的に見ても文学史上の傑作です。「源氏物語《が出現する背景に平安時代の文化レベルの高さを知ることができます。この小説が出て以降、和風の芸術は「源氏物語《を題材にしながら発展したと言っても過言ではないでしょう。
ところで、歴代大河ドラマの第一作目は彦根藩の家老井伊直弼を主人公にした「花の生涯《。昨年、放送された「どうする家康《でも彦根井伊家の祖・直政が活躍していました。平安時代の政権を藤原氏が担ったとすれば、江戸時代は徳川家を中心にした武士団が国の安定を守りました。ちなみに、井伊直弼が衝撃される桜田門外のシーン、雪が降っているので一般的にこの事件は冬に起きた印象がありますが、実際に襲撃されたのは雛祭りの時期、どちらかというと春です。季節もこれからという時、直弼は刃に倒れ、それから幕末の激動が始まります。
写真の盃は湖東焼の作品。文化人だった井伊直弼が主導して作らせた焼物です。先代の十二代直亮、十三代直弼時代の湖東焼を見ると彦根藩の文化レベルの高さを感じることができます。藩窯作品には作家銘が入っていますが、本作には銘がないので個人的に桜田門外の変(1860年)が起こった後に作られた作品ではないかと想像しています。それから2年後の文久2年(1862年)、湖東焼は廃窯となります。
藤原氏が消えて貴族文化が消滅したように徳川政権が瓦解して武士の世は終わりました。本作に日本酒を注いで飲むと、日本史の栄枯盛衰の一面に触れることができそうです。

口径 約6.5cm/高さ 約4.1cm

御売約、ありがとうございました

正院焼 青手九谷 色絵 山水文 大皿
[2024/01/07]

1月1日16時6分頃、能登半島大地震が起こりました。東京も揺れたので、またいつもの地震かと思いましたが、ニュースで流れてくるのは驚くような映像でした。2011年の東日本大震災を思い出してしまいました。地震で被災された方の一日も早い復興と、日常生活を取り戻されることを願っています。
写真の作品は正院焼の青手九谷色絵山水文大皿。この作品を製作したのは石川県珠洲市正院にある正院窯、今回の地震の被災地です。テレビでニュースを見ていると何度も、正院町という吊前が出てきます。それを聞くたびに珠洲市のことを思い出しています。東日本大震災の時は福島県の相馬焼の窯元が放射能の影響で立ち入り禁止となり、伝統の窯が消えかけました。古美術商をしていると列島のどこかで災害が起こるたびに、そこのある国焼窯のことが思い浮かび心配になります。日本列島はプレートの境界上にあるのでは地震が多いのは仕方ないことですが、地震の度に古美術品が消えていくのは忍びないことです。それが人命となるとなお辛い。2024年の始まりは地震の正月となりましたが、これまで何度も災害から復興しました。今回もまた皆で協力して被災地の支援に乗り出し、復興できると信じています。

口径 約36.6cm/高さ 約7.2cm

あらためまして、あけましておめでとうございます。

写真の作品は切込焼の染付龍漢詩文徳利。
切込焼は、現在の宮城県加美町に創設された窯です。2011年から12年、一部の地域以外、東北地方は以前のような姿を取り戻しています。毎年、様々な問題が起こりますが、これからも古美術品から勇気をもらって前に進んでいきたいと思います。
今年もよろしくお願いいたします。

高さ 約22.5cm/胴径 約11.5cm

御売約、ありがとうございました

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