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能茶山焼 染付 菊唐草文 そば猪口
[2023/05/28]

今週は、久しぶりに通信販売で特集を行いました。今回の特集は、日本全国のそば猪口。北は仙台の切込焼から南は高知の能茶山焼(写真のそば猪口)などを出品しています。今から数十年前、駆け出しの古美術商だった頃、先輩にそば猪口の産地を聞くと、「ほとんどのそば猪口は有田製の伊万里焼」と教わったものです。それから経験を積み、自分で作品の鑑定ができるようになると江戸時代後期のそば猪口は日本全国で作られていることが理解できるようになりました。そば猪口が全国各地で作られるようになった起因は、1828年に起こった有田内山の大火。火事で職を失った陶芸家たちが全国に散らばり、磁器製法を各地に伝播したことが日本の陶芸界の勢力図を書き換えました。天保期には瀬戸、砥部、切込などで多数のそば猪口が作られるようになります。 あまりこだわりのない収集家であれば、デザインや雰囲気さえよければ産地など気にならないでしょうが、旅行好きの私は国焼のそば猪口に接すると、実際に行った現地のことを思い出して楽しい気分になります。例えば、写真の能茶山焼を見て思い出すのはカツオのたたき。花古焼だと盛岡冷麺など。本当においしですよね。国焼のそば猪口に地元の料理を盛ると一層、味わいが増します。一度、試してみてください。

口径 約9.2cm/高さ 約6.8cm

御売約、ありがとうございました

李朝 鼠志野風 御本手 徳利
[2023/05/21]

今週末は、「G7広島サミット」の話題でいっぱいでした。G7の首脳がそろって原爆資料館を訪れたことやゼレンスキー大統領がサミットに参加したことなど、話題豊富なサミットだったと思います。その中で地味ですが、個人的に心を打つ出来事がありました。それは21日(日)の朝、日韓の首脳が平和公園内にある「韓国人原爆犠牲者慰霊碑」に参拝したことです。かつてこの慰霊碑は平和公園外にありましたが、1999年、現在の位置に移設され、多くの人が訪れています。私は広島市出身ですが、昔から広島市には多くの韓国人が住んでいました。カープで活躍した金本、現在の監督の新井、かつてスパースターだった故西城秀樹など、広島人にとって在日の人たちは自分たちの生活の一部になっています。ですから、今回のG7で日韓首脳が慰霊碑に参拝したのは、個人的に感動的でした。写真は朝鮮半島で作られた徳利。これを見ると唐津焼や萩焼のルーツが半島にあることがわかります。近年、北朝鮮で発掘や収集が進み、このような作品が日本の市場に輸入されています。これらの作品を見ると、朝鮮半島にはまだまだ日本人の知らない未知の美術品が眠っているようです。地球規模で見れば、日本と韓国の陶芸は親戚のようなもの。この徳利に接して、なぜか親戚のおじさんに出会ったような気分になりました。昔、ブログでこれに近い感覚を持ったことを書いたことがありますが、今回は2度目。この感覚はこれからもずっと続くのでしょうか。

高さ 約22.5cm/胴径 約13.5cm

御売約、ありがとうございました

インドネシア ダヤク族 木彫神像
[2023/05/15]

久々に自由に外出できたゴールデン・ウィークが終わって1週間。日々の生活も落ち着きを取り戻した感じがします。先週、NHKのクローズアップ現代で、オーバーツーリズムの問題を取り上げた番組を放送していました。問題点は2つ、観光地近くで生活をしている人がバスに乗れないなどの問題が起きている、人手上足で従業員が上足し、ホテルが前のように営業できないという問題です。その番組で京都の映像が流れていたのですが、問題は深刻なようです。番組を見ていて、京都の魅力について考えてみました。故梅原猛氏の説では、京都の魅力は京都が怨念都市であったということです。古代から京都は人口密集地だったため、田舎にはない独特な人間関係が生まれました。貴族や庶民は戦乱や陰謀に巻き込まれながら生活をしていた。2000年前後に文化面で「陰陽師・安部清明」ブームがありましたが、このブームなどは京都文化をうまく紹介していたと思います。ところで、写真のブルネオ島の木彫神像。この作品を見ていると、ふっと安部清明が使用していた護符のことを思い出しました。縄文の昔から人々は厄除けのために呪術を信仰していますが、ボルネオ島では最近まで、昔の日本と同じような呪術を活用していたようです。近年は警備にビデオやロボットなどのテクノロジーが導入される時代ですが、テクノロジーが発達したとしても、世界中の人たちは呪術都市、京都を目指す。京都が普通の観光地とは違う魅力を持っているのは、このような部分にあるのかもしれません。ちなみに、強盗などが多発する物騒な世の中、本品を家に置いて厄除けするのも有効かもしれませんね。意外と昔の方法が安心をもたらしてくれるかも。テクノロジーが発達しても、人間社会には上可解な部分が必要なのかもしれません。

高さ 約16.5cm/横幅 約3cm/奥行 約3cm

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伊万里焼 染付 梅花唐草文 七寸皿
[2023/05/07]

久しぶりに自由を満喫できたゴールデンウイークも終盤となりました。今日は全国的に雨ですが、皆様は休日、楽しめたでしょうか。写真は伊万里焼の花唐草文七寸皿。かつてバブル時代、本作のような作品は1枚6万円くらいだったと思い返しています。現在はそれが落ち着いた値段となっていますが、安くなった理由は主に磁器作品の印刷技術が発達し、コピーが容易に作れるようになったから。デパートの食器売り場にいけば、本物そっくりのコピー作品が並んでいます。オリジナルでなくてもコピーで十分に用が足せるということですね。しかし、花唐草のコピーを食器に使ったとしてもどうも味気ない。本物の良さを知っていればいるほど、コピーの味気無さが際立ちます。オリジナルとコピーの違いは、オリジナルからは十分に手間をかけた跡を感じることができるが、コピーは機械化によって値段を下げるという経済的な目的の方が目立っていることでしょうか。これは外部委託傾向の親子や恋人などの人間関係にも当てはまるような気がします。最近、ChatGPTが普及し、著作権の問題やフェイクの危険性が指摘されるようになりました。技術が発展するのは仕方がないとしても、人が持っている良い機能を失っては本末転倒。便利になったからといって、手を抜いていては人生の楽しみは味わえないでしょう。技術が発展すればするほど、反対に大切なものが見えるようになるも面白い現象ですね。やっぱり労力をかけて獲得したものには充実感も備わる。それを感じることのできる感性や感覚は、どのような世の中になっても忘れたくないですね。

口径 約20cm/高さ 約3cm

御売約、ありがとうございました

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