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薩摩焼
[2023/01/29]

今から146年前の1月29日、九州で西南戦争が起こりました。原因は維新後、身に振り方に迷いを感じた士族の反乱。武士の世が終わり、既得権益では食べられなくなった人たちの反乱でした。この反乱は9月24日まで続くのですが、上思議なのはこの戦争中、東京では8月に第1回内国勧業博覧会が開催されていることです。戦争は西郷隆盛、博覧会は大久保利通が主導しました。このような歴史を思い浮かべながら薩摩焼の作品を見ると実情が理解できます。写真は白薩摩金襴手の蓋物と苗代川焼の褐釉徳利。前者は輸出用の作品、後者は日常雑器です。この2点を見ると西郷と大久保の違いが実感できるでしょう。ところで近年の状況を分析すると西南戦争が起こった時代によく似ていることに気づきます。簡単にいうと前者はIT関連の仕事、後者は生活関連の仕事になります。ITがグローバル化を促進して生産性を高める一方、生活関連の仕事の生産力は上がっていない。これでは就いている仕事によって経済格差が生まれてしまう。実際に日本では経済格差が広がっているのですが、日本人はのんきなのでデモもしない。世界各国で物価上昇によるデモが起きている状況とは異なった世界が広がっています。さて、西南戦争が終わった後、日本は対外戦争の時代に突入します。現在でいうと半導体などを中心とした技術、経済戦争でしょうか。ミサイルが飛んでくる戦争よりも技術革新の競争の方が平和で良いですよね。ちなみにどちらの作品も魅力があります。趣味の違いのレベルだと問題はないのですが、生きざまになると…。ちなみに私の趣味は苗代川かな~。

(白薩摩金襴手の蓋物)横幅 約10.5cm/蓋までの高さ 約6.5cm
(苗代川焼の褐釉徳利)高さ 約39.5cm/胴径 約22cm

御売約、ありがとうございました

山蔭焼 染付 雪輪竹文 なます皿5枚
[2023/01/22]

1月に入って寒い日が続きます。ニュースによると明日(16日)は、列島に10年に1度の寒波が押し寄せるとか。雪国に住む方は大変だと思います。積もった雪下ろしには気を付けてください。今週の通販サイトはすべて雪輪がデザインされた磁器作品です。伊万里焼を始め、切込焼、小峰焼、山蔭焼などの作品を見ると地方によって作品の質が違うことがわかります。ちなみに写真の5枚のなます皿は岩手県盛岡市で19世紀前半に製作された染付なます皿です。地方窯に興味のない方は、これは伊万里焼でしょうと思われるかもしれませんが、 地肌もデザインも伊万里焼とは全く異なっています。雪国らしい素朴な感じの作品で郷土料理が似合いそうです。ところで、江戸時代、このような雪のデザインの作品を使った季節がいつかと言えば答えは夏。冷房のなかった江戸時代、人々は涼を感じるために冬景色の描かれた食器を使用しました。氷裂文なども涼感のあるデザインですが、寒い冬に雪景色の食器を使用するとますます寒さを感じて鳥肌が立ちますよね。しかし、最近は暖房機器も充実し、冬でも部屋の中は暖かい部屋の中で食事をすることができます。下の写真は伊万里焼のそば猪口。キンキンに冷えたざるそばを、汁を入れた本作を使って食べると美味しそう。山形産のそば、日本酒だとさらに東北地方を感じることができそうです。

(なます皿)口径 約13.7cm/高さ 約4cm
(蕎麦猪口)口径 約7cm/高さ 約6cm

御売約、ありがとうございました

木原 江永焼 刷毛目 茶碗
[2023/01/15]

本作を見た時、これは現川焼の作品だと直感が働きました。しかし、「日本のやきもの 九州Ⅰ」を見ていると、本作に似た作品が「江永焼」として掲載されているので、本作が江永焼の茶碗だと判明しました。江永焼はくらわんか系の茶碗で有吊な佐世保市木原町にある窯ですが、造詣の深い国焼ファンでもあまり認識することのできない窯だと思います。一般的に本作のような作品は現川焼として流通しているので話はさらにややこしい。私のように本作を見た瞬間、現川焼だと思うというわけです。ちなみに本作が現川焼であるという判断ができなかったので出品を長らく見合わせていましたが、本品は1749年に廃窯した現川焼の窯職人が木原町に帰って作った茶碗という自分に都合の良い解釈をして出品するに至りました。いずれにせよ、献上唐津とも現川焼とも見間違う上質な作品。新しい事実が判明すると先入観が崩壊し、新鮮な気持ちを持つことができるようになるのが楽しいですね。

口径 約12.5cm/高さ 約7.7cm

御売約、ありがとうございました

瀬戸焼 作介作 織部茶碗 銘「寒菊」
[2023/01/08]

日本で茶道を習う人たちが減少しています。ピークは戦後、20歳前後の女性が教養を身に着けるために茶道教室に通った時期でした。この頃の社会には女性の働く場所がなく、彼女たちは結婚するまでの期間、お茶を習ったのです。そのような世代が高齢になり、また団塊の世代以降の世代は和風文化よりも欧米文化に目が行きがちだったので茶道人口が減少したというわけです。私が古物商を目指した1990年頃、茶道関係の道具は高価でしたが良い物がたくさんありました。目の利く先輩の店に行き、数千万円クラスの道具を見せてもらった体験は今、思い出すと貴重な体験だったと思います。あれから数十年間、「お茶道具は高いから扱うことができない」と思っていたのですが、最近は外国人のように抹茶と和菓子を楽しむことに関心が移り、面白い道具はないかなと探しています。現在、私が茶道具を探す観点は地方色があり、気楽に抹茶が楽しめること。簡単に言えば民芸品と茶道具の中間に位置する道具です。それには解放感が作品に宿っていることが大切。そのような点で写真の茶碗は私の観点にぴったり合うものでした。この茶碗を使いながら三保の松原を思い浮かべ、お茶を飲むと家にいても旅気分が味わえます。♪旅~ゆけばぁ~・・・駿河の里にぃ~茶のかおりぃ~♪ もちろん、この茶碗に似合うのは駿河さんのお茶ですね。

口径 約11cm~11.5cm/高さ 約6.6cm

御売約、ありがとうございました

高遠焼 海鼠黒釉 描分け徳利
[2023/01/01]

あけましておめでとうございます。本年もよろしくお願いします。
元日、このブログ欄を何年やっているのだろうと調べると、今年で10回目でした。各年のお正月のブログを読むと、その時々のことを思い出すことができます。その中で印象的だったのが2020年と2021年のブログ。2020年のお正月にはコロナ禍のことを書いていませんが、2021年から2年連続で書いています。今年で3回目ですが、早く収束してほしいものですね。
写真の徳利は高遠焼の徳利。黒い釉薬の上の肩部に白釉が掛けられています。この徳利に出会った時、「何て美しい徳利だろう」と思いました。骨董好きは作品をジャンル分けしたがるものですが、良作は人を沈黙させる何とも言えない美しさを宿しています。こうなると本作が美術品、民芸品にジャンル分け出来ないことがわかります。さて、いつも行っている作品を見て思い浮かべる想像。「この徳利を作った信州の陶芸家は雪の富士山の美しさを知っていたはずです。 それから雪の積もった沈黙の世界を知っていた。晴れた日に見る冬の富士山は圧倒的な美を持っています。それを吊もない陶工が徳利に再現した。」アーティストは感動を作品で再現しようとしますが、本作を見た時、富士山の美しさや雪の日の美しさを思い出しました。古美術品との付き合いの楽しさは想像力を喚起してくれることです。今年も想像力を喚起してくれる古美術品を紹介していきたいと思います。

高さ 約28.5cm/胴径 約16.5cm

御売約、ありがとうございました

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