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李朝 秋景 「五穀豊穣」 行列図
[2022/05/29]

黒澤明の映画に「夢(1990年)」という8話からなるオムバニズ作品の中の1話に、「水車のある村」で笠智衆が子供を率いて村を歩く場面があります。当時、映画を見た時、なぜか、その映像が私の記憶に強く残りました。それが数十年経って李朝の絵を見た時、蘇ってきました。絵の中に水車を見て、「夢」の映像を思い出したようです。「水車のある村」の舞台は長野県安曇野市にある大王わさび農場と万水川、蓼川の合流地点。本当に美しい。かつて東アジアには、このような村がたくさんあり、そこで人々は生活していました。「夢」が作られたのは1990年、バブル経済が最高潮だった時ですが、その頃、まだ日本には映画や軸のような村が残っていたような気がします。あれから30年が経ち、世の中は随分と変わりました。世の中は経済中心になり、静かな村には多くの観光客が訪れます。生活感のあった田舎の美しい風景は夢だったのか? 軸を見ていて、ふっと消えて行った時間を思い出しました。経済的に発展しても、あの美しい風景を作り出すことはできない。本軸を見て、美しかった世界を思い出すばかり。それでも、その記憶があるだけでも幸せですね。

本紙サイズ 縦横 61cm×64.5cm
軸サイズ 縦横 113cm×77cm

御売約、ありがとうございました

洗馬焼 緑釉 甕
[2022/05/22]

長年、古美術商をやっていますが、民窯について多くの迷いが生じます。先輩から○○窯の作品だと教えてもらったり、本でどこの窯かを調べたりしていましたが、やっぱり実物を見ながら実感しなければ納得できない。写真の窯は昔なら長野県の松代焼を考えたでしょうが、土を見ていると松代焼とは違う。民芸に興味のない人にとっては、どこの窯でも美しければ良いじゃないかと言われそうですが、民芸の面白さは、時代や窯場によって作品の雰囲気が変わるところでしょう。洗馬焼は民芸ファンなら知っている窯ですが、ほとんどの人は知ることもない窯です。ちなみに洗馬焼については、「塩尻市の焼き物 信斎焼・洗馬焼・入道焼」という本があり、この本を見ると洗馬焼の土がどのような物か知ることができます。逆に言うと、塩尻の焼物は本が出版できるほど魅力があるということです。本と実物を照らし合わせてみていると、本作が松代焼ではないこともわかります。日本人は作品がどこの窯で作られたか無頓着ですが、地元の窯の魅力を発信している有志がいることは心強いと感じます。本作には直しがありますが、それでも入手した理由は、この機を逃すと出会いがないかもと思ったからです。直しがあっても美しい作品は魅力がありますね。

高さ 約19.7cm/胴径 約21cm

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陶胎漆器 金蒔絵 藤・丸に鬼梶の葉文 茶入
[2022/05/15]

先日、NHKの「美の壺」で、藤の番組が放送されました。それを見て、日本人がどのように藤に関わってきたかが理解できました。面白かったのは藤の蔓を使った民具や衣服があること。日本には古代から様々な繊維素材がありますが、日本人が藤を愛する理由が生活に密着していたことを知りました。藤は古代から観賞用としても愛されていたようで、特に古代豪族の藤原氏は自分の苗字に藤の名前を当てています。私見ですが、藤原氏の祖先は葛城氏。中央アジアのクチャから渡来した仏教徒クズラギがクズワラになったと私は考えています。渡来人の葛城氏は日本に定着した時、その象徴として藤を選んだ。彼らは先住の王の補佐をしながら日本で勢力を伸ばすことを目指したのだと思います。藤と言えば奈良の春日大社、関東の笠間稲荷、亀戸天神が有名です。面白いのは埼玉県に藤の名所がたくさんあることです。関東は源氏の土地だと思われがちですが、もともとは藤原氏の勢力圏でした。西荻にある井草八幡も元をたどれば春日神社。中世以前の関東の状況が藤の分布から把握できます。写真は丸に鬼梶の葉と藤文のある茶入れ。梶の葉は、古代からの豪族、信州の諏訪氏の家紋ですが、梶と藤を合わせた意匠があることから、本作を作らせた家が相当な歴史を持つ家だったことがわかります。ちなみに諏訪大社も鹿島神宮も武氏を祀っています。神道や古代を想像できるデザインの茶入れ、面白いですね。

高さ 約6.7cm/口径 約21cm×10.5cm

御売約、ありがとうございました

源内焼 舟形 取っ手付 菓子器
[2022/05/08]

今年のゴールデンウィークは久々に多くの人が外出できたようです。東欧では紛争が起こっていますが、日本はいたって平和。物価が上昇しても、平和で外出できる世の中の方が良いですね。写真は江戸時代、高松藩の御用窯で作られた源内焼の菓子器。西洋の銀食器のソース入れを模した物です。御存じのように源内焼は西洋の知識の豊富だった平賀源内が蘭学書をもとにデザインした焼物。江戸時代、日本は鎖国をしていたというのが常識ですが、本作を見ると本当に鎖国していたのだろうかと疑いたくなります。ところで最近、ネットの世界ではバーチャルが流行し、移動しなくても世界とつながることができると喧伝されていますが、本当にそうでしょうか。実際にはウクライナの悲惨な映像を見ても、現実味がない。映像が進化したとはいえ、それは実態のある世界とは異なり、ロシアとウクライナは別の世界で争っているように感じてしまいます。本作を見ていると、江戸時代の人が西洋をどのように感じていたのか想像することができます。物から想像力を発揮するのか、バーチャルにおぼれて現実感を失っていくのか、その辺が現代社会の問題です。それにしても、本作を菓子器(共箱に記してある)に見立てた江戸時代人の発想は面白いですね。いったい、どのような菓子を盛っていたのでしょうか?

高さ 約6.7cm/口径 約21cm×10.5cm

御売約、ありがとうございました

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