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伊万里焼 黄地唐草文 角皿
[2022/02/27]

最近、「江戸時代、日本は鎖国をしていたのか」という議論が盛んになっています。三代家光から五代綱吉の頃は鎖国感が強いのですが、その他を見ると、江戸時代にも日本人が外国の文化を大いに吸収していたことを感じます。特に享保の改革期や田沼の時代、幕末の日本人はオランダを通して世界情勢にも通じていました。当時、日本が交流していたのはオランダ、中国(清朝)など少ないのですが、それだけでも世界に通じる情報、文化を入手できたのでしょう。私は数年前、長崎に行った時、江戸時代の国際交流の魅力を実感しました。それ以来、江戸時代の国際的な古美術品があると入手するように心がけています。写真は伊万里焼の「黄地唐草文角皿」。中国思想の大地の四角と天の丸を組み合わせデザインされています。完全な中国趣味なので長崎周辺の人が注文した特注品だったはずですが、中国思想の神髄を見事に表している。このような作品が日本で作られたこと自体が、日本人の国際交流の豊かさを証明する資料になります。この作品に出合った時、伊万里焼文化の奥深さを改めて感じました。古美術品が世界を開いてくれる瞬間でした。

口径 約27.8cm角/対角線 約34cm

御売約、ありがとうございました

伊万里焼 色絵金彩 幾何学・松文 猪口
[2022/02/20]

骨董をやっていると、これは何だろうという商品に出会うことがあります。写真の赤絵作品もその一つ。一般的に言うと小鉢ですが口径が8センチで、料理を入れるには小さすぎるし、薬味を入れるには小鉢にする必要はない。酢猪口かなと思ったのですが、普通、酢猪口は縦型。また、このような商品は市場で見かけることはないのですから特注品であることは間違いありません。誰が注文したか想像すると長崎周辺の人だったことが推測できます。中国人(清の商人)は赤絵が好きですから。本作が作られた享保年間は日本で中国茶(煎茶)が徐々に広まっていった時期です。でも、この頃、日本には煎茶を飲む習慣がなかったので、日本製の煎茶器はまだ存在しない。当時、日本で使用されるものは清からの輸入茶器でした。で、有田の人たちは日本の煎茶器を作ろうとして本作を試しに作ってみたのではないか。もっと想像を飛躍させると、元禄期に作られていた輸出用のカップ&ソーサ―を真似て本作を作った。とすれば、本作には受け皿があったのかもしれませんね。窯が商品を製作するときは、十個単位では注文を受けるので本作も類似品があったはずですが、それが残っていないので不明な点が残ります。しかし、現在、この小鉢は日本酒の酒器にぴったりのサイズ。もう少し、大量に残っていれば人気が出たと思うのですが、当時の日本人もまたこのような形の盃は使っていないので……。骨董品から時代や製作された背景を考察しながら、それを今、使うのは楽しいですね。

高さ 約22cm/胴径 約9cm

御売約、ありがとうございました

山田焼 青首徳利(灰首徳利)
[2022/02/13]

日本人は色に対して繊細な感性を持っています。世界の国を見ると、それぞれに国の色というものがあります。例えばフランスの青、ブラジルの黄色などは有名で、それをサッカーのユニフォームに採用します。日本の場合、国の色といえば日の丸の赤を思い浮かべますが、灰色に関して日本人は他国の人よりも敏感な感性を持っているように感じます。それは曇り空が多い日本の気候、湿度から生まれた美意識でしょう。茶道では千利休が鼠色を好んだ「利休鼠」、鼠志野があるように渋い好みを表わす表現に使われます。「いぶし銀」という言葉は灰色に近い感覚で使われるのでしょう。 ところで写真の山田焼、普通は首部が青いのですが、本作は灰色(鼠色)の珍しい作品です。山田焼の産地と言えば飛騨高山。 茶人の金森宗和に関係の深い土地です。 高山藩は元禄期には無くなりますが、山田焼のようなセンスの良い粋な文化は、雑器の中にも持続していたのかもしれません。北陸の夏の空は青く、冬の空は灰色。本作を見ながら、これを作った陶工は北陸の冬の空を表現して灰色を使ったのではないかと感じていました。

高さ 約22cm/胴径 約9cm

御売約、ありがとうございました

李朝 飴釉 窯変 徳利
[2022/02/06]

李朝の美術作品の面白さはあまり定型化していないことにあります。同じような作品を作っても陶工の気分によって作風が変わるので面白い。本品に出会った時の感想は「飴釉の作品は面取り壺が多いけど、徳利は珍しいな」というものです。日本でいうと久尻焼や瀬戸焼のような窯変を持つ徳利ですが、面取り壺を見慣れた私にとって、本作は新鮮に映りました。まだまだ世界には珍しい作品がたくさんあるのですね。ところで茶道の盛んな日本はお師匠様の感性の模倣を中心として芸術を発展させてきました。目利きのお師匠様のいうことは絶対で、弟子はそれに従わなければなりません。しかし最近、古美術、茶道界でもグローバル化によって広範囲のジャンルを扱わなければいけなくなったので、これぞといった定型が崩壊しているように感じます。SNSなどが発達して、形式よりも個人の感性を優先する時代になりつつあるような…。それで茶道や伝統芸能の世界も後継者不足に陥っている。価値観が変わったといえばそれまでですが、状況の変化に合わせて物の価値観も決まってきます。本品のような作品はまだ評価が定まっていない。これから、それがどうなるか。ちなみに、この徳利、今の時期は寒椿を活けると綺麗です。白い雪景色の中で見れば、なおさら。気候や天候も時代と共に古美術品の美しさを際立たせるための条件ですね。

高さ 約20cm/胴径 約12.8cm

御売約、ありがとうございました

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