blog   2016年3月

岸連山 渡月橋桜図 
[2016/03/27]

今日、西荻の友人たちと善福寺公園で花見をしました。桜は五分咲きでしたが、陽気もよく、のんびりとした時間を過ごすことができました。 来週は桜も満開になり、本格的な春が来そうです。

写真は岸連山(1804〜1859年、京都生)の「嵐山桜図」。京都で桜といえば、嵐山が定番。 保津川下りをしている船頭さんも春を楽しんでいるようです。 連山は江戸時代後期、京都で活躍した岸派の絵師。有栖川家に仕え、1855年には京都御所の障壁画制作にも携わり、幕末画壇の四天王と称された画家。 このような軸が日本にはたくさん残っているのですが、日本人は有名な画家ばかりに目がいく傾向があり、良い軸を忘れがちです。 それを地道に探してお客様に届けるのが、古美術商の役目。日本人の五分咲きの文化的好奇心を満開に、枯れ木に花を咲かせましょう。

表具サイズ 縦横 約190cm×49cm

御売約、ありがとうございました


漢 緑釉 銀化 小壺
[2016/03/20]

先週に引き続いて、今週も春めいた空のお話。先週、ブログに登場した白丹波の壺はどちらかというと雨模様の感じですが、今週の漢の緑釉壺は晴れた感じがする作品。発掘品なので湿度よりも、乾きを感じます。春先は晴れと雨の日が交互にやってきます。それを日本人は花冷え、春一番という言葉で表現してきました。昨日、公園を散歩していたら桜の一部は開花していましたが、夜には雨。お天気ニュースでは、桜の満開は月末になる予想だそうです。
ところで、この時期の乾燥といえば黄砂を思い出します。晴れて乾燥した日には、偏西風に乗って大陸から大量の黄砂が日本に飛来する。昔の人は黄砂の存在を知らなかったので、春はおぼろと感じていたようです。花粉症の方にはつらい季節ですね。
写真の緑釉壺は偏西風ではなく、飛行機で運ばれてきた物でしょう。古代中国の古美術品の再発掘が始まった20世紀後半、日本人の古美術商は商品を求めてせっせと香港や北京に通っていました。しかし、発掘が禁止された現在、逆に中国人が日本に商品を買いに来る。時代は変わりました。今は平和で人の交流が盛んですが、長くこのような時代が続いてほしいものです。はるばる中国からやってきた、この緑釉壺くん。この先、日本の誰の家にホームステイするのでしょう。

高さ 約13.5cm/胴径 約11.8cm

御売約、ありがとうございました


白丹波 蓋付 壺 (江戸時代後期 19世紀中頃)
[2016/03/13]

最近、暖かい春日と寒い冬日、晴れと雨の日が交互にめぐってきます。冬の中に春がある気配はしますが、本格的な春になるまでもう少し時間がかかる感じ。 季節の変わり目は体調不良が起こりやすいので、皆様、気をつけてください。
曇り空の中、散歩をして店に帰ってきた時、ふっと商品棚に飾ってある雨漏り模様のある白丹波の壺が目に入ってきました。 壺を眺めておると、先ほどまで見ていた曇り空に似ています。今にも雨が降り出しそうな雲、風に舞う小さな砂埃。 日本人は作品を作る時、他民族以上に季節や自然の風景と適合させることを意識していました。 そのような職人が作った作品を使用するうちに更に景色が出て味わいが深まる。 写真の白丹波壺などは、職人、環境、時間が一体となって出来上がった作品であるといえるでしょう。 このような感性は観念や理念を重んじる西洋にはありません。 この壺を見た西洋人は「ただの汚れた壺」にしか見えないはずです。 しかし、自然と共生している日本人はこれを味わうことができる。 西洋と東洋の美を両方、理解できる日本人の感性は素晴らしいですね。 せっかく、このような感性があるのですから、皆様、雨漏りを楽しんでください(ただし、家が雨漏りした時は、すみやかに修理をした方が好いでしょう)。

高さ 約18.5cm/胴径 約18.5cm

御売約、ありがとうございました


伊万里焼 藍九谷 丸文幾何学 六寸皿 (江戸時代前期 17世紀中頃)
[2016/03/06]

最近は伊万里焼の熱狂的なブームも去り、落ち着いた様子を示しています。 ブームを主導したのは「からくさ」の主人だった中島誠之助さんや団塊の世代の主婦たち。 あの頃は伊万里焼を集めるのが古美術品収集の主流だったような気がします。
ブームも去り、値段も落ち着くと、すべてが美しく見えていた伊万里焼の作品も本来の姿を取り戻し、伊万里焼なら何でも良いという時代は終わりました。
そのような状況の中で、今回、掲載した藍九谷・六寸皿などに出会うと「伊万里焼でも美術品に匹敵する物はあるのだな」と改めて感心します。 肌合い、デザイン、どこをとってもセンスが良い。 初期藍九谷の時代は中国風のデザインが和風化する時代で、バタ臭さが消え洗練されたデザインとなります。
この作品はコレクターの方から分けていただいたのですが、入手した時は満足感でいっぱいになりました。 「伊万里焼ブームは去った」などと決めつけないで、伊万里焼の美しい作品を探すのも、これからの楽しみの一つかもしれません。

口径 約17.9cm/高さ 約3cm

御売約、ありがとうございました


第26回・骨董講座「古代・中世と古美術シリーズE奈良時代の文化と美術」が終了しました   
[2016/03/05]

今回も講座への参加、ありがとうございました。今月は受講生の人数が少なかったので、ゆっくりと講座を進めることができました。
奈良には訪れたことがあっても、時代の実態はあまり知られていません。大胆な仮説を交えてお話ししましたが、いかがだったでしょう。
次回は「F平安時代初期の文化と古美術 −天台宗と真言宗―」。平安時代初期、都が平安京に移されると中世への扉が開かれます。 それがどのように成立、展開したのかお話しします。お楽しみに。

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