blog   2015年10月

石像 牛頭天王
[2015/10/25]

昔、京都・太秦の広隆寺で陰暦の9月12日(現在は10月12日)の夜、牛に乗った摩多羅神が国家安穏・五穀豊穣・疫病退散の祭文を読む「牛祭り」が行われていました(今は牛を調達できないので中止されています)。
「牛祭り」は京都の「鞍馬の火祭」。 「今宮やすらい祭」と並ぶ三大奇祭の一つで、他の寺院では見られない不思議な祭です。
御祭神の摩多羅神はローマから伝来した牛神・ミトラス神(戦闘と豊穣の神)。インドではマイトレーヤ、中国では弥勒菩薩と呼ばれています。 平安京遷都時に全国で牛を崇拝する祭が行われていたことが文献で残されており、古代ローマの祭が遠く日本に伝来したことを想像させます。 その後、ミトラス神は神仏習合時代になると、「牛頭天王」はスサノオノミコトの化身として祇園社の祭神となりました。
写真の石像は明治26年に奉納された石像です。 八坂神社は有名ですが、祭神である牛頭天王の石像はたいへん珍しい。奉納した人は五穀豊穣を祈願して、これを安置したのだと思います。 江戸時代、各村には石像がたくさん置かれていました。北関東の田舎に行くと、今でもそのような石像に出会うことができます。秋日和の一日、石像に出会う旅に出てみませんか。

高さ 約24.5cm/横幅 約13cm/奥行き 約11cm

御売約、ありがとうございました


モダンな系譜   −李朝 花草文墨壺―
[2015/10/18]

私の好きな画家にアンリ・マチスと辰野登恵子がいます。 マチス(1869〜1954年)はご存じの通り、20世紀を代表する画家でフォービズムから「色彩の魔術師」と呼ばれる装飾的絵画で知られています。 抽象的な絵画はモダンデザインにも通じ、後世に大きな影響を与えました。一方、辰野登恵子(1950〜2014年)は20世紀後半を代表する日本の洋画家。 残念ながら昨年64歳の若さで亡くなりましたが、生前、残した作品は日本絵画史に新しい境地を開いたといっても過言ではないでしょう。 2人の共通点は平面絵画に独特の色彩とフォルムを取り入れたことにあります。おしゃれな絵画とは2人が描いた絵画を指すと思います。
ところで、写真の墨壺。モダンさとは関係の無さそうな李朝の作品ですが、これを見た時、私はマチスと辰野の作品を連想しました。 デザインでいうとウイリアム・モリスに近い。李朝にも、このようモダンなデザインを施したものがある。 これを作った大工は西洋のモダンデザインを知っていたのでしょうか?
国や時代は違っても、共通の完成を持つ人は存在する。この辺りが美術の面白さです。

(左)マチス 版画の一部  (右)辰野登恵子 版画
高さ 約7.5cm/横幅 約19.2cm

御売約、ありがとうございました


李寶那 フレンチブルーぐい飲み 
[2015/10/11]

先週の金曜日、仙遊洞のホームページ「お知らせ」に紹介した李寶那さんの陶器の展覧会が神宮前のプロモ・アルテ・ギャラリーで開催されました。
私は彼女の個展に毎年行っていますが、会うたびに「1年経つのは早いですね」が合言葉になっています。 三年前、私が李さんに「ぐい飲みを作って欲しいのだけど……」と頼んだところ要望を聞き届けてくれ、試行錯誤しながら独自性のあるぐい飲み作りに挑戦してくれました。そして、今年、いくつかの素晴らしいぐい飲みができあがりました。 展覧会初日、個展会場に行った時間が遅かったので、めぼしいぐい飲みはすでに完売。残念に思いながら購入したのが写真の作品です。
私には北欧モダンの感じがしますが、本人によるとフレンチブルーをイメージした作品とのこと。いずれにせよ小さくても存在感のある美しい作品です。 ぐい飲みは手取りが大切なのですが、この作品は私の手にぴったり、口当たりも良く日本酒にとても合います。他にも数点、購入したのですが、どれも美しい作品。 古美術に目が行きがちな私ですが、このような作品に出合うと現代陶芸も良いなと思います。 来年も個展を開くそうなので、今度は早めに出かけて、気に入った作品をゲットしよう。

※秋にはお父様(李禹煥)の個展が東京であるそうです。


伊万里焼 たこ唐草六寸皿(18世紀後半) 
[2015/10/04]

先週、何点かの伊万里焼・たこ唐草の作品を入手しました。写真の六寸皿もこの時、入手した1点です。 団塊の世代の女性ファンが古伊万里を熱心に収集した時代、たこ唐草や花唐草はあこがれの的で高価でした。 「他の商品に比べて人気がある唐草は高値だな」と思ったことを覚えています。
それが昨今、コピー商品や偽物が横行するせいで人気はガタ落ち、「何だ、たこ唐草か」ということになってしまいました。一体、あの頃の熱狂は何だったのでしょう? 
しかし、ブームが去った後でも、本物のたこ唐草作品を見るとやっぱり良いと思います。流行は去っても美しさに変わりはない。 この皿に料理を盛れば、美味しそうに見えるでしょう。
現在はシャビーな雰囲気の物やカントリーブーム(それもいつか流行遅れになる)ですが、刺身を盛るには伊万里焼! 中国の磁器と中東のコバルトが出会い、それが日本に入ってきて和食に合うようにアレンジされた伊万里焼(若い人たちは土物に刺身を持っていますが、あれは映えない)。
最近、世界各地で刺身、すしブームですが、それが浸透していくにつれて伊万里焼の良さが見直される日が来るはずです。 その時、一時的な熱狂ではない、たこ唐草の評価が定まると思います。

口径 約18.6cm/高さ 約3cm

御売約、ありがとうございました


第21回・骨董講座「古代・中世と古美術シリーズ@縄文時代の文化と美術」が終了しました  
[2015/10/03]

古代・中世史の骨董講座シリーズが始まり、第1回目が終了しました。
今回のテーマは「縄文時代の文化と美術」。縄文時代という名称を知っていても、その実態となると考古学ファン以外にはなじみが薄いジャンルです。 縄文時代を知れば知るほど、日本人について考察が深まるのですが……。一応、参加して下さった5名の受講者には「縄文観が変わった」と好評でした。 軽い頭の体操になりましたよね。縄文時代の石器や土器に触れながらの骨董講座、皆様、お疲れさまでした。

来月は「弥生時代の文化と古美術」。興味のある方の参加をお待ちしております。

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