blog   2014年11月

イチョウ文 棗 
[2014/11/23]

イチョウの葉が黄色く色づき落葉する季節になりました。街路にイチョウ畳が敷かれると、毎年、年も押し詰まってきた感じがします。 イチョウは火に強いので江戸時代には火除け地に、明治時代になると剪定に強い性格から日本各地の街路樹として植樹されたそうです。 東京では明治神宮外苑、千駄ヶ谷、大阪では御堂筋などのイチョウ並木が有名。 日本の都市ではイチョウが秋を彩りますが、フランスではトチノキ科のマロニエ、特にパリのマロニエ並木が有名で、ジュリエット・グレコが「枯葉」を歌っています。

写真はイチョウ文の棗。本格的な茶道では黒棗を使用しますが、このような絵が描かれた棗を使うのも楽しい。 忘年会で飲食に疲れた後、抹茶を飲みながら一年を振り返ると……。一年が過ぎ、時が経つのは早いものですが、各季節を楽しむことのできる日本人は幸せだなと思います。

高さ 約7.5cm/横幅 約7.5cm

御売約、ありがとうございました


李朝水注 
[2014/11/16]

秋が深まり、公園の木々も色づき始めました。鮮やかな紅葉の季節まで、あと少し。今年の秋は温かい日と寒い日が交互に続く気まぐれな感じです。 寒暖の差が激しく、私の周りに風邪気味の人がたくさんいます。

写真は「李朝鉄釉水注」です。李朝人は煎じ薬を作る時などに水注を使用していました。 朝鮮半島は日本列島よりも寒いので、人々は風邪をひかぬように食事に気を遣っています。今でも韓国料理がスタミナをつけるための料理であることは周知の事実です。 日本人は韓国人と比べて薬膳料理に疎く、薬膳といえば中華料理だと考えます。奈良に「京こづち」という和食薬膳の店があります。 日本では珍しい和食薬膳を供してくれる店で、疲れた時の健康回復にはもってこいですが、東京に和食薬膳の店がないのは残念なことです。
古美術品は不思議な存在で、この水注を手元に置いておくだけで薬膳や健康管理の食事のことを思い浮かべることができます。 目配せをすると、「寒いから身体が温かくなるような料理を食べなさい」と言ってくれているような……。
「日本人は薬膳よりも鍋で暖をとる」と友人が言っています。いずれにせよ、これから寒い季節です。 皆様、手洗い、うがい、保水、食事に気をつけて、寒い季節を乗り切ってください。

縦横 約19.8cm/高さ 約2.2cm

御売約、ありがとうございました


水の戯れ 
[2014/11/09]

今週の土曜日に「水の戯れ」を下北沢の本多劇場に見に行って来ました。
「水の戯れ」は俳優の岩松了さんが書いた脚本で、1988年、「竹中直人の会」第7回公演(竹中直人、樋口加南子)で初演された「仕立て屋を営むもてない中年男が、死んだ弟の美しい未亡人に思いを寄せて……」という作品です。
初演から26年が経ちますが、演出を変えて現代風に仕立てているのでとても面白く仕上がっていました。芸術の秋、演劇を見る楽しさをあらためて思い出した次第です。古美術店のブログに演劇の記事が登場するのは場違いかもしれませんが、日常から少し視線をずらしたい時、古美術品や演劇、音楽など、芸術が生活に潤いをもたらしてくれることは確かです。
「水の戯れ」は東京(16日まで本多劇場)これから大阪(11月22日シアター・ドラマシティ)名古屋(11月24日名鉄ホール)、神奈川(11月29・30日KAAT芸術劇場)で上演されます。興味のある方は是非、ご覧ください。

追記:この作品に出演している近藤公園君は、私の飲み友達です。劇がはねた後、一緒に飲んだのですが見ていた演劇と現実が混同(近藤)して、なかなか面白かったです。


蒔絵 ススキ文 香盆 
[2014/11/02]

日本人にとってススキはハギと共になじみ深い植物で、月とともに秋の風情を醸し出しています。先日、私はつくば山麓で秋風になびくススキを見ましたが、つくば山と相まって、それは風情のある情景でした。江戸時代の俳人・与謝蕪村は「狐火の 燃えつくばかり 枯尾花」と呼んでいます。秋風になびくススキの姿は日本人に強い哀愁を感じさせるのでしょう。
日本人は昔から繊細な民族で、季節に合わせて五感を楽しんでいます。

写真の蒔絵は香炉などをのせる香盆。昔の人はススキが描かれた香盆の上に置いた炉の中で香を焚いて、秋の香りを楽しんでいたのでしょう。それが秋草の下で鳴く虫の音と一体化した時……。贅沢ですね。
都会の喧騒の中でも古美術品を身近に置くと、秋を感じることのできる演出は可能です。日常生活に疲れた時は、古美術品に触れて、静かな時を過ごすのも一興です。

縦横 約19.8cm/高さ 約2.2cm

御売約、ありがとうございました


第12回骨董講座 「仏教美術」が終了しました
[2014/11/01]

1990年代まで「仏教美術」は特殊な分野で収集家も限られていましたが、2000年代に入ると「パワースポット」の流行や「歴女」の出現で様変わりしました。 若い人たちにとって仏教美術は信仰の対象物ではなく、美術品に接する感覚があるのだと思います。 今回の骨董講座には3名の参加者があり、HP上に掲載されている内容とは全く異なる講座でしたが楽しんでもらえたと思います。 カニシカ王を輩出したクシャーン人と藤原氏の関係など、他の講座では聞けませんからね……。

来月は日本に滞在中の韓国人・呉在一さんをゲストに招いて「韓国と日本の文化比較」を開催したいと思います。意 外と日本人は隣国のことを知りません。興味深いトークになると思うので、皆様の参加、お待ちしております。

骨董講座に参加ご希望の方はこちらから


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