blog   2014年10月

南画 
[2014/10/26]

今日、外を散歩していると木枯らしが吹いていました。公園の木々が色づき始め、それを照らす夕焼けがとてもきれいで、深まりゆく秋を感じました。 浦上玉堂や与謝蕪村の絵を見ていると、南画は秋冬のものかなと感じます。
江戸時代には士農工商という身分制度があり、それぞれに独自の絵画文化を形成しました。武士は狩野派、知識人は南画、庶民は浮世絵に親しみ、絵画的世界を楽しんでいます。 日本人が南画に接したのは17世紀後半。長崎に上陸した南画は煎茶の流行とともに知識人の間に広がり、池大雅、与謝蕪村、谷文晁などが出現して、狩野派と対抗する勢力になりました。 明治時代、岡倉天心が南画をマンネリ化した絵画様式と批判しましたが、唯物的な美術が流行する現代では、その魅力が再認識されています。

写真は「秋月湖舟上短笛図 (明治時代頃)」。作者は不明ですが、秋の月下、葦船の上で笛を人物が流麗な筆使いで描いています。 南画家は理想の風景を描きますが、作者は寂寥感が人間にとって必要であることを理解していたのでしょうか、人の感情と自然が一体化する瞬間を描いています。 笛の音や湖上を渡る風の音が聞こえてきそうです。一幅の軸が静寂の世界に誘ってくれる。これが古美術の楽しさです。

本紙サイズ 約42cm×46.5cm
表具サイズ 約56cm×136cm

御売約、ありがとうございました


神無月と大黒天 
[2014/10/19]

先週、台風19号が日本列島を縦断しました。翌日、東京の空には美しい秋空が広がり、夕焼けは「雨後晴天」、鈞窯の器のように美しい色をしていました。秋ですね。 毎年、この時期に神無月が始まりますが、今年は閏月が入り、後の十三夜があるので少し様子が違います。 それで、各地の神様の季節感がずれているかもしれません。

仙遊洞では10月に入って、「商品販売」欄に大黒天特集を行っています。 写真は上杉鷹山が始めさせた「おたかぽっぽ」の影響を受けて作られた山形県の「面なし大黒天」。 大きくてケヤキ製なので、豪商が家の梁上に守り神として作らせたものだと考えられます。
今年は自然災害が多い年でしたが、現代の日本人は自然の脅威を再認識、安心して生活できる環境を再構築する時期かもしれません。 大黒天を見ていると、家を守ってくれる存在が何だったか、思い出すことができます。

高さ 約25cm/横幅 約17.5cm/奥行 約9.5cm

御売約、ありがとうございました


食欲の秋 
[2014/10/12]

食材売り場に行くと、先週までは並んでいた梨に代わって棚に並んだ柿が目に入り、それを見ると色づく季節が来たなと感じます。
秋の食材は何と言っても「実」。栗や茸類を新米に混ぜて炊き込みご飯は秋ならではの楽しみです。土瓶蒸しも良いな。 炊き込みご飯を盛る茶碗は何と言っても瀬戸焼の麦わら手茶碗です。麦わら手茶碗には瀬戸焼の染付磁器がありますが、こちらはどちらかというと夏向き。秋料理にはやっぱり朱色の陶器が似合います。

写真の商品は大正時代に作られた作品です。 江戸時代の麦わら手茶碗のように高価でもなく、現代の麦わら手茶碗のように無味でもない。このあたりの商品を生活雑器として使うのが骨董の楽しみ。使う食器によって味覚が変わるのが不思議ですね。

御売約、ありがとうございました


割烹・小料理 かさね 
[2014/10/10]

先週、赤坂見附にある「かさね」に行き、おいしい料理を堪能しました。
「かさね」のご主人、柏田幸次郎さんは宮崎県出身で「魚山亭」で修業後、18年前に独立した料理人です。 常連客のお目当ては季節の食材を使った料理と宮崎県名物の冷や汁。
古美術好きなので器選びや盛り付けのセンスも抜群、さすがに「ミシュラン1」を3年連続で獲得する実力のある料理店だと納得できます。 価格もリーズナブルなので、赤坂近くに行かれた時は、是非、お立ち寄りください。

お店のホームページはこちらから


第11回 骨董講座「漆器」が終了しました
[2014/10/05]

10月から骨董講座を再開しました。数日前に2名のキャンセルがあり、参加者2名の講座でしたが、受講生には好評でほっと胸をなでおろしています。 縄文土器、弥生土器、茶道と漆器、各地の漆器などの話をしたのですが、日本人と漆器がいかに深く関わってきたか、意外な発見があったようです。 秘蔵の蔵品などを展示して、講座が終わった後、皆さんの漆器観が変わったと思います。
講座の内容は「骨董講座」に掲載してあります。興味のある方はご一読ください。来月は仏教美術について、お話します。

講座内容はこちらから
骨董講座に興味ある方はこちらから

上へ戻る