blog   2013年7月

真道黎明 「凉宵」 (昭和)
[2013/07/29]
暑い日が続きますが如何お過ごしでしょうか。
前回は涼を求める滝の軸、今回は夕顔の軸です。滝が男性を象徴するのであれば、花は女性的の象徴でしょう。花には男性的な力強さよりも女性的な繊細さがあります。
の題名は「凉宵」で、夕顔の上空には三日月が見えます。白い花が宵の薄暗さに浮かび上がり、陶器でいうと宋時代の青白磁、影青のような色合いです。

私は毎日、宵の口に夕食の準備を始めますが、慌ただしい毎日を送っていると静寂な世界があることを忘れがちになります。夕食が終って一息ついた時、この画に目をとめると思わず絵の世界に惹きこまれてしまいました。
『源氏物語』 に有名な 『夕顔』 の章があります。
「心あてに それかとぞ見る 白露の 光そえたる 夕顔の花」
「寄りてこそ それかとも見め たそかれに ほのぼの見つる花の夕顔」
夕顔と光源氏の歌です。

この絵を描いた真道黎明は 『夕顔』 の章を意識していたことは間違いありません。良い画家は絵を通して、架空の世界に我々を誘ってくれます。

本紙サイズ 長さ:131cm/幅:31cm
軸サイズ 長さ:225cm/幅:45cm

御売約、ありがとうございました

岡田蘇水 滝人物図 (昭和)
[2013/07/22]
先週、関西に旅行に行って参りました。
目的は今城塚古墳、阿武山古墳、呉服神社、坂越、龍野の斑鳩寺などに行くことでした。移動の途中、箕面の滝、布引の滝に寄りました。関西は熱かったので、そこで涼を取った次第です。
日本人は滝観賞が好きなので各地の名滝には多くの人が訪れます。私も今までいくつかの滝を見ましたが、中でも華厳の滝、那智の滝、袋田の滝が好きです。特に那智の滝を見ていると龍が躍動しているように見えます。
日本人が滝を信仰の対象とした気持ちが理解できます。

軸は岡田蘇水(1880〜1942年)が描いたものですが、小さな人間と大きな自然の対比がうまく描かれています。蘇水は滝を龍神と見立てて人物を配したのでしょう。禅宗にとって龍は仏法を守る神獣なので、寺院の法堂の天井に龍が描かれています。そう考えると、この画は禅宗様になります。
画を見ていると滝の音が聞こえてきます。


御売約、ありがとうございました



箕面の滝


志田窯 唐傘人物図 (幕末)
[2013/07/09]
昨日、日本列島は梅雨が明けたと、同時に猛暑となりました。
最高気温は三十五度前後で、熱中症で搬送される人も増えています。「雨が降らないので水不足」、「猛暑日」と、人々はいつも天気に翻弄されています。
江戸時代、稲作を中心に経済が回っていた時代、今以上に天気は人の生活に関わっていました。日照りや長雨、台風などの天候不順に農民たちは肝を冷やし、それは私が子供の頃まで続いました。二十年前、長雨で米の収穫が激減し、タイ米を輸入して騒いだことを覚えています。
今回、取り上げたのは志田窯の「唐傘図」、雨の中を行く二人の人物が描かれています。季節は梅雨時か夏でしょう。降り出した雨の中、どこかに急いでいるように見えます。古美術品は季節や生活の一断片を切り取って図柄にしているので面白いですね。絵の中の二人に「どこに行くの?」と声をかけたくなります。
ここ数日、東京で夕立が続き、先日など雨と共に雹が降って来たのには驚きました。小さな氷のつぶがアスファルトの道路にぶつかって飛び跳ねていました。その時、私は買い物中でしたが、洗濯物を干したまま家を出たことを思い出し、電話をかけ「洗濯物を取り込んで」と頼みましたが、時すでに遅し。主婦にとって突然の夕立は敵です。私はこの皿を思い出し、図中の人物のような気分になりました。
この様子では今年の夏は猛暑でしょう。皆さん、熱中症と夕立には注意して下さい。

口径:29cm/高さ:5cm

御売約、ありがとうございました

上へ戻る