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コロナの思い出
[2025/07/12]

7月に入って暑い日が続きます。このような暑さでは外出もできません。熱中症対策は必須です。
写真は伊万里焼の染付七寸皿。一見、普通の作品に見えますが、絵をよく見ると鳥のような不思議な生物が描かれています。この作品の写真を始めて見たのは2000年頃、古陶磁研究家・出川直樹さんが古美術雑誌『小さな蕾』に「この生物は一体何だろう?」と書いていたエッセイです。あれから20年が経ち、実際にこの作品を購入しましたが、出川さんのエッセイを読んでいなければ、この作品にも興味がわかなかったかもしれません。

ところで3年前の7月、私はコロナに感染しました。高熱は出なかったのですが、身体のだるさが一か月間続き、今でもあの時の辛さを思い出すことができます。コロナが流行していた当時、マスコミで「アマビエ」という妖怪が注目されていました。アマビエは1846年5月(弘化3年4月)に現在の熊本県、肥後国海上に出現したとされる疫病封じの妖怪です。当時、日本各地にアマビエのような妖怪が各地に出現したということです。ペリー来航の7年前、日本人は時代の変化を潜在的に感じたのかもしれません。
本作に描かれた生物は何か判らなかったのですが、アマビエを知った後、この生物がアマビエではないかと想像できるようになりました。本作が製作されたのは18世紀後半ですが、いつの時代も日本人は疫病封じの存在を求めていたのでしょう。もしかすると当時の人々は鳥がインフルエンザなどの病原体を運ぶ生き物だと考えていたのかもしれません。幸いコロナ感染は下火になりましたが、古美術品を見てコロナ禍のことを思い出したことは意外でした。

口径 約20.5cm/高さ 約3.5cm

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%83%9E%E3%83%93%E3%82%A8

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風車と水上風力発電
[2025/07/05]
ドーデの風車

26歳の時、南フランス・プロヴァンスにあるドーデの風車を見に行きました。風車はオランダにある物だと思っていた私は丘陵地帯にある風車を見て驚きました。南フランスはミストラルという強い風が吹くので、風車を利用できます。考えてみれば欧米はパン文化なので、この地方は小麦の殻を取り除くのに風車を利用したのでしょう。小麦の殻を除かなければ、あの美味しいフランスパンはできません。20歳代半ばで稲作文化しか知らない私は自分の知識のなさに唖然としたのを覚えています。

写真はオールドノリタケの風車の花瓶です。オールドノリタケは風車の図柄を多く採用しています。この作品を見た時、「これはオランダの風車だ」と思いました。低地で海が近いオランダでは風車は主に水位管理、干拓、排水に使用されます。本作が製作された当時、日本人はオランダの風車を思い浮かべながら作品を作ったのでしょう。現在でも風車はオランダを象徴する文物。本作を見ながら近代ヨーロッパでは風車が灌漑・発電・製粉・風速計など多目的に使用される動力源だったことを再考した次第です。
ちなみに日本は水車の利用が多いので、風車には馴染みがありません。最近は脱炭素、再生エネルギー利用の観点から洋上風力発電に注目が集まっていますが、昨年12月、三菱商事が洋上風力事業で巨額の損失を出すなど日本での風車事業は難しいようです。本作が製作された当時の日本人は、21世紀の日本で洋上風力発電を行うなど想像もしなかったでしょう。現在、多くの日本企業が水上風力発電事業に参加することを表明しています。うまく行くと良いですね。

高さ 約20.3cm/胴径 約14.4cm

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