このページは2019年6月1日(土)に行われた骨董講座を再現したものです。 |
第59回 「日本の古民芸」 |
広島出身の私はカープファンです。4月、セリーグが開幕した当初は、カープは泥沼のような状態で最下位。「今年はダメかな」と悲しい気持ちで試合を見ていましたが、元号が令和に変わる頃から見違えるようなチームになって勝利を重ね、現在、セ・リーグ首位に立っています。なぜ、骨董講座でカープの話をするのか疑問に思われるでしょうが、1970年代、カープが強くなった時期と伊万里焼や民芸ブームが起きる時期が同じだからです。「巨人、大鵬、卵焼き」と言っていた時代、セ・リーグの王者は常に巨人でした。お金がないカープは、財力のある巨人には絶対に勝てなかった。そのような状況ではプロ野球が面白くないので、1965年にドラフト制度が導入され、プロ野球改革が始まります。それで強くなっていったのが、カープでした。 |
(2) 民芸運動と映画監督 |
「民芸」を芸術として広めたのは日本民芸館を創設した柳宗悦(1889年〜1961年)です。柳宗悦はイギリスのウィリアム・モリス(1834〜1896年)の「アーツ・アンド・クラフツ運動」の影響を受け、庶民の使う日常雑器に美を見出しました。明治時代、日本人は西洋に目を向け、ヨーロッパの美術を崇拝し、和風の美を軽んじていました。それに異を唱えたのが岡倉天心やフェノロサ。しかし、彼らが和風の美として捉えたのは、高貴な人たちが扱う鑑賞美術品で、庶民が使う日常雑器ではありません。 |
(3) 民芸の陶磁器に関する産地鑑定の難しさ |
2000年代になるとヤフーオークションが始まり、骨董業界に限らず商品流通に変化が起こります。それまで業者が見向きもしなかった古民芸品がネットに出品されるようになります。偽物も含めて市場は何でもありの状態になり、骨董屋さんの営業文句、「これは珍しいですよ」も通用しなくなりました。商品はネットを見れば出品されているし、相場も見当がつく。ネットの出現によって、それまで玄人だと自称していた古美術商の鑑識眼の怪しさに素人が気付くようになったのです。かと言って、素人の鑑識眼が飛躍したのではない。ネットの拡大で偽物を本物と勘違いして購入する人も増えています。 |
(4) 各地方の国焼 |
各地方の国焼のお話をします。まず東北。東北の国焼の特徴は釉薬にあります。主な釉薬は藁灰釉(海鼠釉)と灰釉。意匠はかけ流しが多く、作品自体、シンプルで素朴な感じがします。徳利は口に特徴があり、台形。磁器を作った東北の主な窯は宮城県の切込焼、岩手県の山陰焼、福島県の会津本郷焼。中でも切込焼は磁器なのに素朴な味わいがあり人気があります。切米焼の独特の絵付けが魅力なのでしょう。福島県の大堀相馬焼は関東地方に近いので作品も多様です。2011年に東北大震災があって相馬焼の産地が避難区域にされてしまい窯が廃止されました。残念です。 |