【1】 古美術界の構造
美術業界は近・現代美術品を売る商人と考古学品、古美術品を扱う業者に分かれています。古美術商になるには公安委員会が発行する「古物商許可証」が必要です。この免許があれば各地で開催されている業者市場に出入りすることができます。公安委員会に属しているのは盗品の売買に注意するために古物協会があります。
古美術商の商品入手するルートは4種類あります。
@専門業者の競り市(会員制、現金制)A業者間の取引(店舗、骨董市など)B収集家からの購入(以前、販売した商品の引き取り、遺産処理)Cインターネット購入(オークション)
このうち@Cはオークション形式で経験が必要です。
古美術商は様々な方法で入手した商品を、@店舗販売(一般販売、顧客販売)Aネット販売(一般販売、オークション)B業者市での出品、で売ります
Bなどは現金が必要な時、所持品の損失覚悟で売ります。
【2】 古美術商になるためには
日本に徒弟制度があった時代、古美術界も徒弟制度を導入していました。古美術商になるには大手古美術商の丁稚になり、修業を積むうちに店持ちとなりました。現在でも地方の骨董屋さんなどは自分の子を都会の大手古美術商に修行に出します。若い人たちは結構、厳しい修業をしている。自分の進路に悩んでいる若者からすれば、親が決めてくれてた骨董の修行は良い進路だと思います。
最近は変わったかもしれませんが、弟子は5年間、月数万円(家賃食事つき)で働かなければなりません。5年間の奉公が終わるといくらかの祝い金を元手に出店していたそうです。
昭和40年代になると、徒弟制度に縛られない若い古美術商が出現します。彼らは地方と都会の価格差を考慮に入れて商品を売買していました。地方で買い出した魅力的な商品を都会の市場で売りました。
1990年代、日本人が骨董の価値を認識すると、雑誌やメディアを見て古美術商になる人もふえました。美大出身者、古美術愛好家も古美術商になりました。私は独力で古美術を勉強した人間ですが、最初は悪い業者に騙されて大変でした(笑)。
団塊の世代の主婦の中に、旦那さんの資金協力を得て、古美術商になった人がいました。そのような人は素人で考え方が甘いので経営はうまくいかない。どの業種も事業を継続するのは難しいものです。
2000年代、従来の古美術品とは違う見方をする新しい古美術商が出現します。彼らは修行することもなく、自分の感性だけを信じて営業しています。専門家が決めた価値観よりも、素人の感性と感性の出会いが取引の中心となっている。流動的な価値観の変化をみていると、時代の感性は素早く変化することが分かります。
【3】 古美術商の営業形態
古美術商は商品を@店舗販売(一般販売、顧客販売)、Aネット販売(一般販売、オークション)、B業者市での出品で売ります。大塚家具の営業方針で親子がもめていましたが、古美術業界にも同様のことが起こっています。年配の古美術商はブランド価値、付加価値を高める商品、若者たちは感性にあった価格の商品を取り扱おうとする傾向があります。
最近は大手古美術店もネット販売を行っています。若い2代目はITに通じているので、ネット販売が可能になりました。60代以上は店舗販売、40代以下はネット販売をして、両世代がいる店は二つの営業形態を採用しています。
ネットを見ていると、それだけで商品を買うお客様がいるような感じがしますが、多くのお客様は店舗に来て、店主と懇意にしている人たちです。私の店にも北海道や九州から来店し、店を確認してから商品を購入されています。ネット販売も一度、信用されれば取引がスムーズです。
その他、古美術品販売には多目的ホールでの骨董市、定期的な企画市、露天市への出店があり、出店業者には店舗を持っている人もいない人もいます。
【4】 メディア、町おこし・村おこし
70年から80年代にかけては雑誌の時代でした。バルブ時代には古美術品の専門誌が発行されるようになり、その価値も認識されるようになりました。90年代は一番、古美術雑誌が発行された時代で、古美術愛好家は雑誌を見て、収集の方法を考えていたようです。今から思えば楽しい時代でした。同時期、「何でも鑑定団」がスタートします。テレビの影響も大きかったようです。
ネットが発達した2000年代になると、愛好家は雑誌よりもネットで店舗や商品情報を入手するようになります。商品選択の量、自由が広がり、個人にあった商品を買うことができるようになりました。これからは動画で商品を売る時代が来ると思います。
ネットが発達すると同時に各町、村でイベントが盛んになります。西荻でも「西荻ひな祭り」、「骨董市」、「ほんだら祭り」、「手仕事市」などの骨董企画イベントを行っています。最近は町おこしも複合的で、骨董、古本、飲食などを交えてイベントを行っています。骨董の町、西荻も私が住み始めた頃とは随分と変わりました。骨董屋さんよりも雑貨屋さんが増え、B級グルメならぬB級雑貨に人気が集まっています。
社会格差が広がっても、日本にはそれぞれの階層にあった古美術品が存在します。以前のように高価な物を所持している人が威厳を見せつけるような古美術ハラスメントの時代は無くなりました。価値観は時代とともに刻一刻と変化していきます。これからは自分の生活環境にあった古美術品を身近に置く楽しい時代が来ると思います。
(終わり)
|