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木彫 華厳経 仏像
[2021/04/25]

4月25日から5月11日まで、東京などで緊急事態宣言が発令されました。これで3度目。このままだと4度目はオリンピック後かなと想像しています。写真は韓国の寺院で購入したと考えられる「大方廣佛華厳経大三凾」の小さな彫刻。華厳経は、日本でいうと東大寺が信仰する経典です。東大寺の前身は金光明寺(金鐘寺)という光明皇后(藤原不比等の娘、聖武天皇の皇后)が亡き息子のために作った寺院です。寺院の名に「金」の文字が入っていることから、東大寺が新羅と関係の深い寺だったことがわかります。光明皇后は救貧施設の「悲田院」、医療施設である「施薬院」を設置して慈善事業を行った皇后として知られています。735年頃、平城京では天然痘が流行し、藤原四兄弟が相次いでなくなっています。コロナ禍が収まらない状況で、ふっとこの作品があったことを思い出しました。
ここ数日、インドのコロナ感染者の状況がテレビで繰り返し放映されています。インドのコロナ感染者数は1日30万人とか。このような状況では神様よりも、ワクチンにすがりたい気持ちになります。
ちなみに日本でワクチン接種が終了するのは、今年中とか。東京オリンピック開催よりもワクチン接種を優先させてほしいのですが……。人の命よりも、イベントの方が大切なのですかね。もしかして、豪華な東大寺建立、落成行事を見た庶民は、今の私と同じ考えだったかもしれません。一刻も早く、ワクチンが世界中の人に行き渡るとよいですね。

高さ 約14.2cm/横幅 約3.7cm

御売約、ありがとうございました

亀山焼 山水唐草文 蓋物
[2021/04/18]

4月に入って、コロナ騒動が復活しています。今回は、変異ウイルスと大阪の感染者数増大。一方で、ワクチン接種のニュースも流れています。「早く、ワクチン、打ってよ」という気分ですが、なぜか政府の対応が遅い。これでは気が滅入ります。 先日、NHKの「新日本風土記 長崎街道 再」を見ました。長崎街道は長崎と小倉を結ぶ江戸時代の街道です。この番組を見て、長崎街道沿いには砂糖を大量に使った銘菓があることを知りました。番組視聴後、我慢できなくなった私は近くの百貨店に行き、「福砂屋のカステラ(長崎市)」「村岡屋のまるぼうろ、羊羹(小城市)」を買いました。まるぼうろと羊羹は番組内で紹介されています。このような行動をとっているから、いつまでたってもダイエットができない!

今週、亀山焼の蓋物を通信販売欄にアップしたのですが、番組を見た後、「そうか、これは砂糖入れだな」と気づきました。長崎市には砂糖だけでなく漢方薬なども輸入されていたので薬の可能性もありますが、いずれにせよ本作が貴重な食材を入れる容器だったことは間違いありません。テレビの紀行番組を見ると、一層、古美術品の面白さを味わうことができます。楽しいですね。

蓋までの高さ 約23cm/胴径 約18cm
村岡屋 https://muraokaya.co.jp/ogiyoukan/index.html

御売約、ありがとうございました

備前焼 げんこつ徳利
[2021/04/11]

今週は、現代美術の彫刻と古美術品の類似です。写真は備前焼の徳利ですが、ぐにょぐにょに歪んでいます。このような造形は桃山時代の伊賀焼作品に起源を求めることができるでしょう。歪みに美を見出す民族は、世界的に見ても珍しい。西洋ではバロックが「歪んだ真珠」を意味し、歪みに美を見出そうとしますが、日本の歪んだ作品ほどひどくは歪んでいない。この徳利を絵にすると、ムンクの「叫び」に似ている気がします。西洋の思想では、正常な世界は幾何学的で秩序立ち、歪んだ世界は不安定を意味する。 まさか、日本酒を飲んだ時に徳利がこのように歪んで見える…、ではないですよね。川端康成に「眠れる美女」というエロティックな小説がありますが、その内容を造形にしたようにも見える。男性が女性の身体を触るのが、彫刻の始まり? と、いうことは、ムンクの「叫び」は女性的な世界の到来を意味しているのかもしれません。幾何学的な近代が終わった後、到来した世界は歪みが主流となる世界なのかもしれません。

高さ 約12cm/胴径 約6.5cm

御売約、ありがとうございました

薩摩焼 龍門司窯 鉄釉薬 船徳利
[2021/04/04]

3月末の桜の季節も、花見をできないまま4月に入りました。4月1日に新入社員の姿を見て、そうか、今は4月だと感じた次第です。今週は久々の古美術品と現代美術の共通点についてのブログです。お題は、薩摩焼の鉄釉の船徳利と山口長男の絵画作品。似ている部分は、土味感です。私が大学生の頃、山口先生は多摩美油絵科の特別講師でした。構内ですれ違った時、「これが有名な山口先生か」と緊張したことを憶えています。山口先生が亡くなる1年前のことです。
写真の徳利を見た時、鉄や石、木などの素材を使う、もの派の作風を思い出しました。総じて、もの派の作品は地味で物質的。その先駆になったのが、山口先生の作品だったような気がします。と、すれば、もの派の美意識を遡れば、鉄釉の徳利や漆器だったのかもしれません。さらに時代をさかのぼれば古墳土器にたどり着くでしょう。鹿児島の語源は「鉄の島」、薩摩焼の語源は「砂鉄の湾」。この徳利、鹿児島や薩摩を体現しているような作品です。久しぶりに古美術と現代美術を比べて楽しい時間を過ごしています。

高さ 約23.5cm/胴径 約16.5cm

御売約、ありがとうございました

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