blog   2017年11月

越前焼 お歯黒壺
[2017/11/26]

11月下旬になると秋も深まり、公園の木々も色づき、枯葉が道の上でカサコソと音を立てて風に舞っています。 秋から冬にかけて、古美術品では染付磁器やガラスよりも、陶磁器や漆器が恋しい季節となります。 写真の越前焼お歯黒壺などは見ていると温かみを感じ、そこに紅葉の一枝を投げ入れると一層、季節感を感じることができるでしょう。 古美術品との付き合いは、別の角度から見ると季節とつき合うことなのかもしれません。
もともと、日本人がお歯黒を始めたのは古代、抜歯同様、ファッションの一部でした。 彼らがお歯黒を行ったのは呪術やファッションにためで、それが後に虫歯予防の手段となります。 昔は歯磨き粉が無かったので、お歯黒で虫歯予防や口臭衛生を行っていたのですね。お歯黒の習慣は中世に一時途絶えますが、江戸時代に復帰します。 お歯黒に慣れていない人から見ると結構、グロテスクですが、小説家の谷崎潤一郎などは「お歯黒をした日本の女性は美しい」と言っています。
お歯黒壺は北陸や瀬戸の窯で生産されました。この地方は鉄が豊富なので、お歯黒の材料に事欠かなかったようです。 お歯黒の習慣はなくなりましたが、お歯黒壺に花を生ける習慣はいまだに続いています。小さなお歯黒壺の造形が日本人の好みに合うのでしょう。 古美術好きなら、一家に一個、お歯黒壺は常備して欲しいですね。

高さ 約11.5cm/胴径 約13cm

御売約、ありがとうございました

白薩摩 天目茶碗 
[2017/11/19]

先週、北海度や東北に寒波が押し寄せ、たくさんの雪が降りました。東京でも12月中旬の気候になり、寒い日が続いています。 木枯らしが吹いた土曜日の朝の冷え込みは、天気予報の温度よりも体感温度が低い感じがしました。皆様、風邪などひかないように保温、給水を十分に行ってください。
そのような気候の中、薩摩焼の「白薩摩」を入手しました。これは私が12年前に売ったのですが、たまたま縁があって、再び手元に戻ってきたものです。 久しぶりに見ると、「やっぱり良いな」と思いました。テレビの天気予報で北海道に雪が降ったのを見て、本品を「通信販売」欄にアップしたのですが、すぐにお客様の「御買約」に。 やはり良い物はすぐに売れるのだな、と感心しました。 昨今、古美術業界では出物が少なくなりましたが、お客様との縁で良品を扱うことができます。それが古美術商の楽しさです。 寒い季節なので、白磁茶碗に温かい抹茶でも入れて一服してください。きっと、綺麗ですよ。

口径 約12cm/高さ 約6.5cm/天目台に乗せた高さ 約13.5cm

御売約、ありがとうございました

山口硯閑 井の頭風景 
[2017/11/12]

この作品をいつ購入したか、まったく記憶がないのですが、題材が「井の頭」なので購入したことは間違いないようです。 私が初めて井の頭公園に行ったのは1979年、大学生の時。 1975年に中村雅俊のテレビドラマ「俺たちの旅」の舞台が吉祥寺だったので、そのドラマのファンだった私は聖地に行くような気持ちで井の頭公園に行ったことを覚えています。 東京には「井の頭公園でデートをすると、園内にある弁財天に嫉妬されて、恋人はわかれる運命にある」という都市伝説がありますが、本当なのかな。 私にとって井の頭公園はデートスポットを言うより散歩道。 あの頃の井之頭公園は静かでよかったのですが、現在、吉祥寺は「日本で一番済みたい街NO1」になって人だらけの雑然とした街になりました。 本作を見ると、若い頃、私が行っていた当時よりもずっと静かな井の頭池が描かれています。 吉祥寺に限らず、東京の町の変容ぶりは急速で、「あの頃は良かったな」と思う自分は確実に歳を取っているのでしょう。 時代によって人も街の思い出も変わりますが、変わらないのは骨董品だけ。 ちなみに11月末、井の頭公園、秋色に色づいて綺麗です。雨上がりの日などは、紅葉で目が覚めるような景色が出現します。機会があれば、1度、訪れてみてください。

額サイズ 縦横 約52cm×65cm
ピクチャーサイズ 縦横 約32cm×45cm

御売約、ありがとうございました

第42回・骨董講座「心理学的に 骨董病とは何か」が終了しました。  
[2017/11/04]

「古美術と社会学」の2回目、「骨董病とは何か」が終了しました。
最近は「骨董病」にかかった人をめっきり見かけなくなりました。 SNSやネットの出現で趣味が個別化し、社会的なコミュニケーションが希薄になったことが原因のようです。 社会学では「家族」や「地域」の絆も徐々に希薄化していくという認識がありますが、「骨董病」の減少も、それと関係しているようです。 それにしても「骨董病」の減少は、日本人の熱情が減退しているのではないかと心配になります。幸い、仙遊洞のお客様は皆様、元気なので心配ない。 趣味でも情熱を失うと老化が始まります。趣味に関しては「死ぬまで現役」が好いですね。次回は「古美術と日本の風景の変容」です。 大正時代と1970年代に日本の風景は大きく様変わりします。それと古美術の関係を踏まえながらお話します。お楽しみに。

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