blog   2015年7月

壺屋焼 掻き落とし鉄釉壺  
[2015/07/26]

先週は連日、太陽のぎらぎら照りつける真夏日となりました。外に出て歩くだけでも大粒の汗が出て大変。 皆さん、外出時の水分補給を忘れないようにしてください。
家で日中、テレビをつけると、高校野球の甲子園予選を中継しています。高校球児が太陽の下、元気いっぱいに走り回る姿を見るのは爽快。 予選を勝ち抜いて甲子園一番切符を手にしたのは、沖縄県の興南高校ですが、それを見て、壺屋焼の作品を取り出しました。

写真がその作品。民芸調で、力強く釉薬が花文柄に掻き落とされています。このような作品を見て、昭和初期の民芸運動家たちは自分たちの理論である「民芸品には素朴な力強さがある」を、自信を持って展開できたようです。 ここには腰を大地に押し付けて生活する人間の力強さが表現されています。高校球児が泥だらけになって白球を追う姿が、一生懸命、生活していた民衆の姿と重なるのかもしれません。
昨今、テクノロジーが発達してクールでシャビイな感性が持て囃されていますが、そちらにばかり気を取られていると感性が狭まるような……。 たまには、このような壺を見て、力強い民芸品の良さを味わってみてはいかがでしょう。

御売約、ありがとうございました

ソレント風景 小島真佐吉  
[2015/07/20]

先週は台風11号が日本列島を襲い、ギリシャ問題、新国立競技場の計画変更など、社会、天気とともに変化の激しい週でした。それが一転、梅雨明け宣言が出されると、うだるような夏さの毎日。皆さん、水分補給をこまめに取って、熱中症にはくれぐれも気をつけてください。

写真の絵は、小島真佐吉(1967年作)の「ソレント風景」。ナポリの南に位置するソレントはイタリアの観光地で、年輩の方であれば「帰れソレント」というカンツォーネを思い出されるはずです。近くのイスキア島には有名な「青の洞窟」もあり、海のバカンス・シーズンになれば世界中から観光客が押し寄せます。私も20代後半、ソレントを訪れた楽しい記憶を持っています。
ヨーロッパに滞在して気付いたことは「ヨーロッパ人は長期バカンスを取って人生を楽しんでいる。それに比べて日本人は……」ということでした。まじめな日本人は一生懸命働くのですが、遊び下手かもというのが私の感想。国や人によって楽しみ方は違いますが、日本は先進国なのですから、人々も観光の長所を人生に取り入れるべきだと思います。最近、国も気づいて外国人観光客の誘致に力を入れています。世界で一番人気の国はフランス。芸術や文化を愛する国民性が、世界中の人を引き付けるのでしょう。日本各地には、たくさんの芸術作品、文化財があります。
この夏、今まで知らなかった日本の地方の魅力を発見するバカンスに出かけるのはいかがでしょう。

御売約、ありがとうございました

古染付 船人物図5寸皿 (明時代末期 17世紀前半)  
[2015/07/12]

週末、日本列島は真夏日になり、梅雨明けも間近なようです。快晴の天気とは別に中国の証券市場やギリシャの再建問題は、世界中の経済を混乱させています。 株価維持に躍起な中国政府は主要企業の株取引を6カ月間、停止させました。自由主義の経済圏では考えられないことです。最近、中国人の「爆買い」が話題になっていますが、ここ数年、日本の古美術店にも多くの中国人が訪れています。 「中国物は無いですか?」が彼らの合言葉。彼らが十数年前まで見向きもしなった発掘品や古染付でも購入意欲満々です。

本品は17世紀の古染付の皿。この皿が製作された17世紀中頃、明は清に攻撃されて国自体が傾きかけ、北京にいた貴族たちは難を逃れて南に向かいます。 彼らに仕えていた御用絵師たちも同行、景徳鎮辺りで絵付けの仕事をするようになります。結果、古染付作品の評価が上がりました。数多くの古染付の図柄を見ていると、主に5人の絵師が絵付けをしていたことがわかります。 どうです、写真の絵も上手でしょう。とても日本の絵師には書けない、巧みな筆使いです。

日本人が経済的な余裕を持てるようになった頃、自国の文化を見直したように、中国人も現在、自国の文化を見直しています。 私は中国が昔のような文化国家になることを望んでいます。景徳鎮も日本物のコピーばかりをしないで、オリジナル作品を作る時期かもしれません。
※ 最近、ネット・オークションに、いい加減な絵付けの大皿、壺、そば猪口などの中国製模倣伊万里焼の作品が大量に出品されています。気を付けてください。

御売約、ありがとうございました

第20回・骨董講座が終了しました  
[2015/07/05]

今回の骨董講座は「古美術、マスメディア、サブカルチャー」。
江戸時代から識字率の高かった日本人は黄表紙、かわら版、浮世絵などの紙媒体を使って情報を取得していました。明治時代になると日本人は世界から、写真機、印刷機など、さまざまな機械を輸入して情報取得を行います。近代史を見ていると、日本人とマスコミの関係性が歴史を作ったことが理解できます。古美術も然り。映画、テレビ、パソコンなどの発達とともに古美術の流行も変わります。最近はインターネットの出現によって、趣味の個別化が進み、古美術に対する感性も世代によって異なるようです。江戸時代から現代までマスメディアの変化を通して古美術品の流行がどのように変わったかを考察。段々、骨董講座も佳境に入ってきました。

骨董講座の内容はこちらから

2015年の骨董講座はここでいったん終了いたします。1年間、受講してくださった皆様、お疲れさま、ありがとうございました。
10月からは「独断と偏見の古代史1〜6」を開講します。古代史を通して日本の美術、文化を解説します。お楽しみに。

骨董講座に興味のある方はこちらから


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