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[2014/07/27]
   2014年7月

城山三郎の小説に昭和30年代の政財界を描いた「官僚たちの夏」があります。この小説はテレビドラマになっているのですが、その中で女性たちが「バナナを思う存分、食べたい」というシーンがあり、それを見ていると子供の頃のことを思い出しました。 当時はバナナだけではなくパイナップルやメロンなどの果物は当時の子供にとってあこがれの的で、誰でも特別な日に両親にねだって買ってもらっていたはずです。
2000年代、豊かになった日本には世界各国から珍しい果物が輸入されるようになり、バナナやパイナップルは普通の果物になり有難味も薄れました。 その頃、見向きもされなかった雑器の伊万里そば猪口が高価になり、バナナが安くなったことを考えると人間の嗜好の変化や経済の不思議さを感じます。

写真は昭和20年代に描かれたメロンの絵です。当時、メロンはバナナ以上に高級で、私はケーキに乗ったメロンの切れ端を食べるだけで嬉しかったことを覚えています。この絵を見ていると日本人がバナナやメロンに憧れを抱いていた時代を思い出します。 品不足で物を渇望していた時代と豊かになって物に対する憧れを持てなくなった時代、どちらが楽しいのか、判断に迷うところです。懐古趣味ではありませんが、絵を見ていると自分を振り返ることができます。これが古美術品と交流する面白さです。

ピクチャーサイズ 約21cm×26.5cm
額 約37cm×42cm

御売約、ありがとうございました


栗 こね鉢 (江戸時代 19世紀)
[2014/07/22]

梅雨が明け、真夏がやってきました。夏バテ対策には食事の充実、熱中症には水分補給が大切になります。韓国では夏に鍋を食べて汗をかき、涼感を感じるといいます。日本でも冷房の中で安定した体温維持を保つには鍋が良いようです。一方、涼しさを感じさせてくれる食材は鮎、なす、冷たいそばなど。冷たいそばが喉を通る時の爽快感は何ともいえません。

写真は東北地方で使われたこね鉢で、手斧のあと、欠けなどが景色を作り、森から直接やってきたような感じがします。哲学者ハイデッカーの「芸術作品の始まり」に書いてある「道具と美術品の境界線の概念」にあてはまるような、無為に作った民芸品がアートになる瞬間を感じさせてくれるこね鉢で、古窯の壺や現代彫刻の美にも通じるものがあります。
「この鉢を使って、捏ねた田舎そばはどのような味がするのだろう」、「こね鉢は戸隠か山形周辺で作られたのかな」と考えていると、強く締めたせいろそばを食べたくなってきました。これから、ちょっとそば屋に行ってきます。

口径 約43cm/高さ 約20cm/高台径 約35cm

御売約、ありがとうございました


プレスガラス ケルト渦巻き文ビールコップ (大正時代 20世紀初頭)
[2014/07/13]

台風8号が去り、日本列島は真夏日に覆われました。まだ、梅雨明け宣言は出ていませんが、もうすぐ暑い夏がやってくることは確実です。皆様、熱中症には注意しましょう。
夏といえば冷たいビール。ビールは紀元前4世紀頃、メソポタミアのシュメール人が発明したと考えられています。その後、ビールの製造方法が改良され、ローマ時代、ヨーロッパのケルト人やゲルマン人が盛んに醸造しました。ホップを使用するようになり、ビールが現在のような感じになったのは中世ドイツです。

写真は大正時代、日本で作られたハーフ・パイント(500cc)用のビールコップ。
第1次世界大戦の時、海外から機械を導入した日本はイギリスに代わって東洋の植民地に商品の供給を行いました。本品に使用されている模様はメソポタミアの羊角のデザイン、ケルト人の渦巻き模様。日本人には馴染みはありませんが、ビールの歴史を感じさせてくれるデザインです。このようなコップを使ってビールを飲むと、一味違うビールを楽しむことができるでしょう。

高さ 約14.8cm/口径 約10.4cm/高台径 約7cm

御売約、ありがとうございました


レディ・メイド
[2014/07/07]

先週、仙遊洞で骨董講座「明治時代以降、日本の古美術品の発見、ブーム・流行の系譜(新感覚骨董まで)」を行い、私は「美術の歴史は人間が発見する美術の系譜」、「美術の様式や概念は永遠ではなく、時代とともに変わる」という話をしました。 その時の話と関係するのですが、近・現代美術史を語る上で欠かせないのがマルセル・デュシャン(1887〜1968年)による「レディ・メイド」の美術概念です。写真の「ビン掛け」は1914年に既製品に軽く手を加えた作品で、当時の人は「これが美術品?」と首を傾げたようです。 デュシャンがこの作品を発表して以降、大量規格品を大量に生産する人間の美術観も大きく変わりました。手作り感を重んじる古美術愛好家とは相いれない観がありますが、規制品も考え方によっては美術品に見えるという新しい視点を教示してくれます。
もう一枚の写真は仙遊洞の商品販売に掲載している「シルバー・プレート 三段トレーススタンド」。この商品はアンテークの部類に入るものですが、デュシャンの概念に沿って見ると美術品のようにも見えます。本品自体、魅力的な物ですが、美術史、歴史の視点から見ると、違った見え方をするのが古美術品の面白さです。

高さ 約36cm/横幅 約26.5cm/奥行 約20cm

御売約、ありがとうございました


第10回 骨董講座が終了しました
[2014/07/05]

7月5日(土)、仙遊洞で第10回骨董講座「明治時代以降、日本の古美術品の発見、ブーム・流行の系譜(新感覚骨董まで)」が開講されました。4名の参加者があり、日本人が明治時代以降、どのように古美術品と関わってきたかお話しさせていただきました。「わかりやすかった」と感想を述べてもらったので安堵しています。講座修了の後、和食屋で打ち上げ会を行いました。参加者の皆様が個性的なので話も盛り上がりました。骨董趣味がある人と飲むのは楽しいですね。
去年の10月、骨董講座を始めた当初は手探りでしたが、会を重ねるごとに楽しい受講生の皆様と会うことができ、楽しい時間を共有することができました。これは私にとって貴重な体験で幸せな時間でした。今年度の講座は今回で終了ですが、骨董講座に参加してくださった受講生の皆さま、ゲストトークで登場してもらった秋山さん、下川さん、呉さんにこの場を借りてお礼を申し上げます。ありがとうございました。
楽しいので骨董講座を10月から再開しようと考えています。次回も皆様の参加をお待ちしております。

講座内容はこちらから

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