blog   2014年6月

浮田一恵 水月図
[2014/06/30]

古代、日本人は星や顔を水面に移して占いをしていました。紀元前後、銅器が伝播すると、日本人は銅鏡を占いの道具として用いるようになり、銅鏡は三種の神器の一つになり、鎌倉時代には神道の系譜を編纂した「水鏡」という作品も登場します。

写真の軸は浮田一恵(1795〜1859年)作、「水月」です。一恵は幕末のやまと絵とやまと心を融合させた神道に造詣が深い勤皇の日本画家で、この軸を見ていると「なるほど」と思わせてくれるところがあります。 一恵は澄んだような時代が来ることを期待して、澄んだ月が水面に映った場面を描いたのでしょう。

梅雨の合間、公園を散歩すると青い空が映っている水たまりに出会うことがあり、占いをするような気分で水面を覗き込み、「これからの世界はどのように変わっていくのだろう」と考えたりします。
一恵の絵のように、清らかな時代、澄んだ自然や人との出会いを増やしたいものです。

本紙サイズ 縦横 約37cm×29.7cm
軸サイズ 縦横 約145cm×42cm

御売約、ありがとうございました


バルティスと大河内信敬
[2014/06/24]

バルティス 「夢見るテレーズ(1938年)」

大河内信敬 「パリ郊外図(1937年)」

先週の日曜日まで東京都立美術館で「バルティス展」が開催されていました。展覧会はバルティスの妻である節子夫人の監修したもので見応えのあるものでした。バルティス(1908〜2001年)は東プロイセン生まれのポーランド貴族、印象派やシュールリアリズムなどの美術運動に属さず、少女の生態、鏡面作用など心理学的な作風を独学で築いた20世紀の中でも重要な作家です(兄のピエール・クロソフスキーも哲学者として有名)。
一方、大河内信敬(1903〜1968年)はあまり有名ではありませんが、父が理研総帥、娘が女優の河内桃子というエリート・芸術一家に生まれた画家で、品の良い絵を描いています。写真の大河内信敬作「パリ郊外図(1937年)」は、バルティスが「夢見るテレーズ(1938年)」を描いた1年前の作品で、両者の出身、階層、作品を比べると感性の近さを感じることができます。案外、信敬はパリ滞在中にバルティスに会ったかもしれません。
バルティスの絵は高額ですが、大河内信敬の作品はまだ安価で入手することができます。日本は芸術的宝庫の国です。

ピクチャーサイズ 約25.8cm×34cm
額サイズ 約50cm×57.8cm

御売約、ありがとうございました


彦坂尚嘉 大洪水の記録U(シルクスクリーン1989年 19/80)
[2014/06/16]

先週前半、日本列島は猛烈な雨に襲われ、各地で観測史上、初めてとなる雨量が記録されたようです。後半は一転して、快晴、梅雨の時期なのに夏日という日が続きました。このような天候を見ていると日地球規模で気候が変化していることを感じます。
写真は彦坂尚嘉のシルクスクリーン「大洪水の記録U」、製作年代は1989年、バブル経済の真っ最中。彦坂は作品にバブルが崩壊するのを予言するかのような題名をつけています。優れた作家は時代を読み取り、それを作品化します。あれから25年、世界は以前よりもグローバル化して繋がりも深まっています。もし今度、洪水が起こるとすれば、より大規模な洪水が起こる可能性もあります。それを予防するのが人間の叡智。何気ない問題を解決していくことが、大きな問題を引き起こさないためのコツかもしれません。

ピクチャーサイズ 約45.5cm×56cm
額サイズ 約58cm×68.3cm

御売約、ありがとうございました


第9回 骨董講座「ガラス」が終了しました
[2013/06/09]

先週は雨続きでした。そのような中、6月7日(土)に仙遊洞で「ガラス」の講義をしました。参加者は4名。魅力的な女性ばかりだったので、講師の店主はニコニコ顔でした。
講義は「ガラスの歴史」、「キリスト教とガラス」、「ガラス製作が押し進めた近代化」、「大正時代のガラスの需要」、「ガラス・ボトル収集」など、自分でも面白い内容だったと思います。ガラスは骨董の世界では馴染みが薄いものですが、歴史を通して考えるといろいろなモノが見えてきます。講座を担当した講師自身が楽しめた講座でした。
次回は今年度、最後の講座です。講座名は「古美術業界の構造と変容、皆でトーク」です。ふるって、ご参加ください。

講座内容はこちらから
ビン博士 庄司太一 ボトルシアターのリンクはこちらから

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